女子力高めなはずなのに
「吉田課長、今日はもう来れないから俺に確認してくれだってさ」

受話器を返しながら、井川さんは不満げに言った。

「なんか、すみません……」

「いいよ。手伝ってやるから」

「え?」

微笑む井川さん。

手伝ってくれるんだ……。

確認だけするつもりかと思った。

一緒に残業なんて……、嬉しいと思っている私がいる。

「だってこれ、一人じゃ大変だろ?」

「……ありがとうございます」

「敬語だと気持ち悪いな」

「経理課のミスですから」

井川さんはフフッと笑うと、愛ちゃんのパソコンを開けた。

「パスワードは?」

パスワードを教えると、井川さんも経理システムを立ち上げた。

「他の営業所で経理にいたこともあるから、システムの使い方は分かってるんだ。まずはどの伝票から間違っているのか、分かる?」

グルグルと画面をスクロールさせて確認する。

「うん。……どこから間違っているのかは分かるけど、これ、同じ禀議書の決裁番号使ってるから、簡単には修正できないよ……」

「一度消さないとダメってことか」

おっ?話が早くて助かっちゃう!

「そうなの。間違ったデータを消して、新しく入力し直さないと」

「じゃあ俺が間違ったデータを消していくよ。消したデータがどれなのか、原票に付箋付けて渡していくから、お前はそれを見て正しいデータを入力して。……原票のファイル、どこにある?」

指示出しの判断、すごく早いな……。
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