女子力高めなはずなのに
……井川さん!

どうしてここに?

「お前もやられっぱなしになってないで少しは反抗しろよ。嫌ならイヤだってハッキリ言ってやれ」

「……」

どうして?

どうしていつも助けてくれるの?

わけも分からず涙がこぼれてきた。

「大丈夫か?」

「……うん」

お父さんは相当酔っているみたいで、何か言っているけど聞き取れない。

「井川さん、……どうして?」

「通りがかりだよ」

ちょうど帰り道だったのかな?

井川さんは酔っぱらってヨロヨロと暴れるお父さんを横にして地面に押さえ付けた。

「捕まえちゃったけど、どうする?どこか連れてく?」

もうお父さんは酔ってほとんど意識もない。

地面で手足をバタバタさせるお父さんは汚れた格好をしていて、まるでボロ雑巾のようで、急に虚しくなった。

そうだ!お兄ちゃんに連絡しなきゃ。

「……お兄ちゃんに、迎えに来てもらう」

急いでスマホを取り出して、お兄ちゃんに電話をかけた。
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