女子力高めなはずなのに
私はすごく恵まれてると思う。

お父さんと二人の時は大変だったけど、その後お兄ちゃんに、大変だった分を取り返すくらい大事にされて育ったもの。

家族が一緒にいるのに一人きりだった、愛してほしいのに愛されなかった井川さんの孤独は、私の手の届かないところにある。

それでも、少しでも井川さんが孤独を感じないように、そばに寄り添うことができたらいいのに。

私が井川さんの孤独を癒せたらいいのに。


井川さんと別れた後、車で家まで送ってくれたお兄ちゃんに手を振ったら、お兄ちゃんは車の窓を開けた。

「俺はアイツ、嫌いじゃないぞ」

「え?井川さんのこと?」

「うん……、じゃあな」

「あっ!」

お兄ちゃんは車を発進させて行ってしまった。

また勝手に勘違いしてる。

お兄ちゃんが気に入っても、井川さんがこっちを見てくれなかったら意味ないんだから。

でも、いつかは私を見てくれるだろうか。

私の話を聞きたがるなんて、少しは私に興味を持ってくれた?

私に自分の話なんかしてくれて、少しは私に近づいてくれた?

井川さんが私を好きになってくれたら……。

私、それだけできっとすごく幸せなのに。

考えただけで胸がキュンと痛くなった。


30を目前にして、ヨレヨレねずみ色の色白やせ眼鏡に片想いをしてキュンとする私。

女子力高いんじゃなかったっけ?

そのはずが。

痛いことこの上ないな……。
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