女子力高めなはずなのに
あの時のことを思い出して、ハッとした。

ということは!

あの時……。

車に乗り込む時、井川さんが止めてくれなかったら。

今頃、私……。

ゾッと寒気がした。


私……、ずっと騙されてたんだ……。

全然気がつかなかった。

完全に信じていた。

……私、バカみたい。

一人で真面目にいろいろ考えて。

幸せになれるかも?なんて。

真面目なお誘い?なんて。

本当に大バカ。

井川さんも、槇村さんたちの賭けを知っていたから邪魔したんだ。

そういうことだったんだ……。

私が知ったら傷つくと思って、何も言わずに守ってくれていたなんて……。

槇村さんには騙されていた。
井川さんには守られていた。

私は一人、のんきに何も知らず大バカだった。

いろんなことがごちゃごちゃに混ざった状態で、今までの出来事が頭の中をグルグルと回転していく。

車に乗り込む時の、すごい力で腕を掴まれた感触と井川さんの真剣な表情を思い出した。

ギュウッと胸が苦しくなって、涙が湧いて頬を伝った。
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