女子力高めなはずなのに
注意しようと立ち上がった時、ターゲットに中野さくらの名前が出たから、俺はキレた。本当にブチッと音が聞こえたような気がした。思えばあの時点で、俺は中野さくらを相当好きだった。

「お前らふざけんな!」

「あれ?井川?いたの?アンタそんな言葉、使えるんだ?」

「井川課長、だ。それから世間一般では目上の者には敬語を使うんだ、知らないのか?」

「……」

「そんなくだらない賭けはやめろ。そんなの犯罪だろ。懲戒処分されたいのか?」

「合意の上ならいいだろ?ちゃんと落としてからヤりますよ」

「その後捨てるなら同じだろ」

「ごちゃごちゃうるせーな、本人がよければいいんだよ」

「俺はそんなの絶対に許さない」

「許さなければどうする?邪魔でもする?」

槇村はゲラゲラ笑って椅子を蹴り倒すと出て行った。他の若手はビビったのか何も言わなかったが、槇村について出て行った。

最初は中野さくらに本当のことを言おうかと思った。でも、そんなことを知ったら傷つくだろう。

槇村がいなくなるまでの辛抱だ。ヤツは有給休暇を目一杯使うと聞いてるし。だから、言わないで守ることにした。

絶対に中野さくらを守る。そう思っていたのに。

中野さくらが槇村を好きだと言うなら、合意の上ってことだろう?

いいよ、好きにすればいい。
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