女子力高めなはずなのに
月曜の朝になって、スーツを着た井川さんを見て驚いた。

「ねずみ色じゃない!!」

「うん。改心してちゃんとすることにした」

「ええ?」

それはつまり?
会社でも本気を出すということ?

「これ、去年着てたスーツなんだけどさ、普通に着られて良かったよ」

細身の黒っぽいスーツを着た井川さんは、私のひいき目線なんかで見たら、それはもう超カッコイイわけで。

そんな格好して会社に行ったら、モテてしまうのでは?

急に不安になる。

だって、部下はみんな女の子じゃん。

色白じゃなくてクールで、やせじゃなくてスマートで、眼鏡じゃなくて……眼鏡は?

「眼鏡はかけないの?」

「眼鏡かけないとよく見えないからなー、どうしようかな」

でも、どうしてだろう……。
眼鏡はかけたままでいてほしい。

それはきっと……、眼鏡をかけていない井川さんは、私だけの井川さんでいてほしいから、なのかも。

「眼鏡は、かけて行ってほしいな」

「そう?」

井川さんはニヤッと笑った。

「いいよ、眼鏡なしの俺はお前だけのものだから」

しまった、バレてる!

「分かりやすいな。ホント可愛い」

頭を撫でられて赤くなる。

ここ数日、散々ベッタリくっついて過ごしたのに、未だに可愛いと言われるのは慣れなくて赤くなってしまう。
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