女子力高めなはずなのに
私はふて腐れたどうしようもない井川さんも、孤独な井川さんも知っている。

まさか、ヨレヨレねずみ色の姿が業務課に異動になってふて腐れていたから、なんて夢にも思わなかったけど。

井川さんだって、スッピンの私も、お父さんに怯えるどうしようもなく幼い私も知っている。

お互い弱いダメなところを知っているのに、それでもお互いに大好きだから。

だから、見捨てられる恐怖を感じないのかな。

今までは、弱みなんて見せたら見捨てられちゃうような気がしていた。

だから、何でも一人で抱えて強がっていたし、相手に尽くすものわかりのいい女のふりをしていた。

でも、そんなことはしなくても、もう大丈夫。

私は私のまま、自信を持ってまっすぐ前を向いて歩いて行けそう。

井川さんには輝いてるなんて言われてしまったけど、輝いてるというか、明るい所はまあ確かに私の長所かもしれない。

だから、これからも明るい私でいよう。

私、自分のことを女子力高めとか思ってたけど、料理も見た目も、私が掴んだ幸せとはあんまり関係なかったかも。

井川さんは私の明るい所が良かったみたいだし。

もしかしたら女子力って、男を捕まえるためじゃなくて、自分がどうしたいかってことなのかな。

だから私はこれからも、自分のために綺麗にしていたい。

井川さんにはそのおこぼれをあげる。

だから、ずっとそばにいてね。

私もずっとあなたのそばにいる。
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