女子力高めなはずなのに
でも、なんだろう?

不思議と涙が出てこない。

「ひどいっ」とか言ってポロポロ涙を流す可愛い女になりたいけど、ついつい強がってしまうダメな私。


「そっか。じゃあ、サヨナラだね。お幸せに」

何事もなかったかのように、にっこり笑って席を立つ。

彼、ちょっと呆然。


そりゃ、そうだよね。

いくらなんでも、もうちょっと食い下がると思ったよね?


だって、子どもができちゃったんでしょ?

そんなの、食い下がったところで私を選ぶはずないもん!

どうせ戻ってこないのに、そんな情けないことするわけないじゃない!

私にだってプライドがあるんだから!

こうなったら、最後までものわかりのいい女でいてあげる!

こんないい女を捨てたこと、いつか必ず後悔するんだから!


でも、席を立って背を向けた途端に寂しくなって涙がにじんだ。

私だって、結婚したかった。

……子どもできちゃったなんて、言ってみたかった。

このままだと、涙がこぼれそう……。

気付かれないよう早足で店を出た。
< 4 / 325 >

この作品をシェア

pagetop