キャッチ・ミー ~私のハートをつかまえて~
支払いのとき、「俺が払う」と言う野田さんと、少しだけもめた。

「それだと、洗濯機貸してもらうお礼にならないです」
「メシ作ってくれんだろ」

次の人たちもいたので、とりあえずレジで言い合うのはやめて、その場は野田さんに払ってもらったけど・・・。

野田さんは、さらに私に1万円を差し出した。

「ちょ・・これ、なんですか」
「1週間分の食費。こんだけあれば足りるか?」
「た、足りるって・・・多すぎです!大体私、毎日作らないのに」

洗濯機を買うまでの次の土曜日まで、明日の日曜と火曜日と木曜日に、洗濯機を借りることになっている。
そのとき野田さんの分の晩ごはんを作るということで、お互い了承したのに。
ううん。それより・・・。

「なんで野田さんが食費を払うんですか!」
「俺の方がおまえより金稼いでるから」
「う」

それ、絶対当たってる。

「それにおまえ、金ねえんだろ」
「え。ないっていうか、給料日直前に、急に何万も払うことになるっていうのがちょっと、心もとないだけで・・・」

助手席に座っている私は、両手をよじりながら、つぶやくように弁明した。
もちろん、野田さんの顔は恥ずかしくて見れないから俯いて。

「じゃー、5千円でいいか?」
「いいも何も、お金は・・」と言う私を遮るように、野田さんは「5千円」と言うと、私の目の前に、5千円札を差し出した。

「これで足りなければ、ひーちゃんが出すってことで。いいな?」
「・・・・・はぃ」

なんか・・・野田さんの言葉巧みな話術にはめられたような気が、しないでもないんだけど。
大人二人、3日の晩ごはん代に、5000円もかからないと思う。
とにかく、余った分は野田さんに返そうと決めた私は、ありがたく5千円札を受け取った。


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