キャッチ・ミー ~私のハートをつかまえて~
私のワガママを受け入れてくれた野田さんだけど、おうちに帰って独りでいたいという私の意見は、聞き入れてくれなかった。
野田さんは、何も言わずに、牛乳がたっぷり入ったノンシュガーのカフェオレを作ってくれただけじゃなく、帰る途中で買ったスイートポテトを白いお皿に乗せて、私の前に置いてくれた。
「・・・私、幼稚園の先生してたんです。子どもが好きだから。でも子どもが産めないって・・・分かって・・・」
「妊娠できないのか」
「ううん・・・妊娠できても、赤ちゃんが育たなくて、け、結局、流産しちゃう・・・」
膝を抱えてアームチェアに座っていた私は、こらえきれずに泣きながら、野田さんに愚痴をぶちまけていた。
「・・・だ、だからわたし・・・だって、うっ、子ども欲しいのに、うぅ、欲しくても産めないって、その人、知らないのは分かってる、けど・・・そういうこと聞くと、ひくっ・・・ムカつく・・・」
ホントもう、私って始末に負えない女だと、自分で自分に呆れながら、それでも愚痴を止めることができない。
そんな私に野田さんはティッシュを箱ごと渡しながら、ちゃんと聞いてくれている。
やっぱりこの人、すごく優しい。
「だんなと別れたのはそれが原因か」と野田さんに聞かれた私は、力なく頷いた。
「子どもが産めないことは残念だけど、いい加減受け入れろと言われた1週間後に、あの人が浮気してることが分かったの」
「・・・なるほど。おまえとはセックスする気にならないとでも言われたか」
「あ・・・というか・・・子どもをつくるためだけに・・・する気にならないって。子どものことばかりに囚われてる私を見てるのも、自分に絶望して自分が可哀想と言ってばかりで、ちっとも俺のことを見なくなった私は・・・女らしさが足りないって言われた」
「男は最初から妊娠も出産もできねえからな。その辺の諦めは、女より早くつくと俺は思う」
「・・・そう、ですね。結局、この人とはやっていけないとお互い思って、別れました。それで、知人も友人もいないここに引っ越してきた。誰にも私の存在を知られたくなくて、誰とも関わりたくなくて・・・独りでひっそり生きていこうと・・・」
「だから人と関わるのが怖くなった。自分の存在が、後ろ指さされてるみたいに感じる。女であることの罪悪感と自己嫌悪の塊」
もう何年もずっと抱えている思いを、ズバリ、しかも端的に言われた私は、驚いた顔を隠せずに野田さんの顔を見ることしかできない。
この人・・・何でこんなに私のことが分かっているだろう。
なぜこの人は、ここまで私のことを見透かしているんだろう。
「ひーちゃん」
「は・・い」
「おまえは、子どもが産めないから女らしさが足りないと思ってるのか?」
「えっ・・・」
「別れただんなに女らしさが足りないと言われたから、女としての自信をなくしたと思ってねえか?」
「そ・・・」
当たってる。
だけど・・・これ以上、この人に私の気持ちを見透かされたくないし、聞きたくない!
両目をつぶった私は、耳を両手で塞ぐと、顔を左右にふった。
野田さんは、何も言わずに、牛乳がたっぷり入ったノンシュガーのカフェオレを作ってくれただけじゃなく、帰る途中で買ったスイートポテトを白いお皿に乗せて、私の前に置いてくれた。
「・・・私、幼稚園の先生してたんです。子どもが好きだから。でも子どもが産めないって・・・分かって・・・」
「妊娠できないのか」
「ううん・・・妊娠できても、赤ちゃんが育たなくて、け、結局、流産しちゃう・・・」
膝を抱えてアームチェアに座っていた私は、こらえきれずに泣きながら、野田さんに愚痴をぶちまけていた。
「・・・だ、だからわたし・・・だって、うっ、子ども欲しいのに、うぅ、欲しくても産めないって、その人、知らないのは分かってる、けど・・・そういうこと聞くと、ひくっ・・・ムカつく・・・」
ホントもう、私って始末に負えない女だと、自分で自分に呆れながら、それでも愚痴を止めることができない。
そんな私に野田さんはティッシュを箱ごと渡しながら、ちゃんと聞いてくれている。
やっぱりこの人、すごく優しい。
「だんなと別れたのはそれが原因か」と野田さんに聞かれた私は、力なく頷いた。
「子どもが産めないことは残念だけど、いい加減受け入れろと言われた1週間後に、あの人が浮気してることが分かったの」
「・・・なるほど。おまえとはセックスする気にならないとでも言われたか」
「あ・・・というか・・・子どもをつくるためだけに・・・する気にならないって。子どものことばかりに囚われてる私を見てるのも、自分に絶望して自分が可哀想と言ってばかりで、ちっとも俺のことを見なくなった私は・・・女らしさが足りないって言われた」
「男は最初から妊娠も出産もできねえからな。その辺の諦めは、女より早くつくと俺は思う」
「・・・そう、ですね。結局、この人とはやっていけないとお互い思って、別れました。それで、知人も友人もいないここに引っ越してきた。誰にも私の存在を知られたくなくて、誰とも関わりたくなくて・・・独りでひっそり生きていこうと・・・」
「だから人と関わるのが怖くなった。自分の存在が、後ろ指さされてるみたいに感じる。女であることの罪悪感と自己嫌悪の塊」
もう何年もずっと抱えている思いを、ズバリ、しかも端的に言われた私は、驚いた顔を隠せずに野田さんの顔を見ることしかできない。
この人・・・何でこんなに私のことが分かっているだろう。
なぜこの人は、ここまで私のことを見透かしているんだろう。
「ひーちゃん」
「は・・い」
「おまえは、子どもが産めないから女らしさが足りないと思ってるのか?」
「えっ・・・」
「別れただんなに女らしさが足りないと言われたから、女としての自信をなくしたと思ってねえか?」
「そ・・・」
当たってる。
だけど・・・これ以上、この人に私の気持ちを見透かされたくないし、聞きたくない!
両目をつぶった私は、耳を両手で塞ぐと、顔を左右にふった。