キャッチ・ミー ~私のハートをつかまえて~
諦めない(野田和人視点)
逃走した犯人を追いかけ、捕まえたと思ったら抵抗されて乱闘になったとき、俺が携帯しているナイフを犯人に取られた。
咄嗟に首から顔をかばった俺が、肘あたりを斬られただけで済んだのは、そのときのパートナーだった「マサ」こと、藤原政宗が犯人を取り押さえてくれたおかげだ。
上着まで着ていたおかげで、5針縫った程度で済んだが・・・半袖Tシャツだけを着ている暑い夏場だったら、神経まで斬られて、右腕が使いもんにならなくなってただろう。
だがスーツ1着とワイシャツ1枚、ダメにしちまった。
ま、犯人逃走や犯人と格闘するなんてドラマみたいなことは、せいぜい1割程度。
滅多に起こることじゃない。
9割方、自分が犯した罪の重さに耐えられなくなって自首するか、無抵抗に捕まってくれる、と言うのは普通の捜査課の話。
俺が所属している特別捜査課、通称「特課」では、いわゆる「凶悪犯」と呼ばれる奴らを相手にするため、それだけ危険度も増す。
だから「ドラマみたいなこと」が起こる確率は・・・1・5割増しってとこか。
病院へ行った後、俺の上司であり、特課チームのまとめ役の一人もである「れんじさん」こと連城真之介さんに報告を兼ねたカウンセリングをしてもらった俺は、むしょうに聖(ひじり)に会いたくなった。
が、もちろん会うことはなかった。
翌朝、特課チームの創設者であり、もう一人のまとめ役でもある「なつのさん」こと鬼塚(きづか)夏乃さんから電話がかかってきたので、ここでまた俺は、事件の報告を兼ねたカウンセリングをしてもらった。
今回俺は腕を5針縫う怪我をしたため、翌日の日曜まで休み、そして1週間、現場行きはなし、となつのさんに言われたとき、玄関のチャイムが鳴った。
さっきのチャイムは、下のエントランスじゃなくて、玄関ドアの音だった。
ということは・・・聖である可能性が高いが、職業柄、油断は禁物だ。
「はい」
「あの・・・中窪です。隣の」
俺が急いでドアを開けると、むしょうに会いたいと思っていた聖が、俺の目の前に立っていた。
相変わらず俺を含んだ対人を怖がってる聖は、ただ「会いたい」って理由だけで、誰かんちを訪問することはないだろう。
それでも俺んとこに来たってことは、なんかレスキュー頼みたいことができたか。
だが、ついさっきまで消え入りそうな声を出して、ありったけの勇気をふりしぼってやって来たことを物語っていた聖の視線が、俺の怪我している右腕に行くと、途端におどおどした態度はどっかへ行って、堂々とした本来の聖の姿が、一瞬だけ現れた。
おいおい、やべーよ、そのギャップは。
やっぱこいつには、逆境にくじけない強さがある。
それってモロ、俺が好きな女のタイプなんだよなぁ。
まだ引き返せるかもしれない。
だが、聖を守りたい、甘やかしたいという気持ちは、本人を目の前にしていると、一秒ごとに募っていくばかりで、俺自身も止めようがないところまで来てるようだ。
だから「洗濯機を貸してほしい」という聖にとっては切実な願いに、俺は便乗することにした。
聖のことをもっと知りたいという自分の気持ちに従って。
そして聖の心に近づくために。
咄嗟に首から顔をかばった俺が、肘あたりを斬られただけで済んだのは、そのときのパートナーだった「マサ」こと、藤原政宗が犯人を取り押さえてくれたおかげだ。
上着まで着ていたおかげで、5針縫った程度で済んだが・・・半袖Tシャツだけを着ている暑い夏場だったら、神経まで斬られて、右腕が使いもんにならなくなってただろう。
だがスーツ1着とワイシャツ1枚、ダメにしちまった。
ま、犯人逃走や犯人と格闘するなんてドラマみたいなことは、せいぜい1割程度。
滅多に起こることじゃない。
9割方、自分が犯した罪の重さに耐えられなくなって自首するか、無抵抗に捕まってくれる、と言うのは普通の捜査課の話。
俺が所属している特別捜査課、通称「特課」では、いわゆる「凶悪犯」と呼ばれる奴らを相手にするため、それだけ危険度も増す。
だから「ドラマみたいなこと」が起こる確率は・・・1・5割増しってとこか。
病院へ行った後、俺の上司であり、特課チームのまとめ役の一人もである「れんじさん」こと連城真之介さんに報告を兼ねたカウンセリングをしてもらった俺は、むしょうに聖(ひじり)に会いたくなった。
が、もちろん会うことはなかった。
翌朝、特課チームの創設者であり、もう一人のまとめ役でもある「なつのさん」こと鬼塚(きづか)夏乃さんから電話がかかってきたので、ここでまた俺は、事件の報告を兼ねたカウンセリングをしてもらった。
今回俺は腕を5針縫う怪我をしたため、翌日の日曜まで休み、そして1週間、現場行きはなし、となつのさんに言われたとき、玄関のチャイムが鳴った。
さっきのチャイムは、下のエントランスじゃなくて、玄関ドアの音だった。
ということは・・・聖である可能性が高いが、職業柄、油断は禁物だ。
「はい」
「あの・・・中窪です。隣の」
俺が急いでドアを開けると、むしょうに会いたいと思っていた聖が、俺の目の前に立っていた。
相変わらず俺を含んだ対人を怖がってる聖は、ただ「会いたい」って理由だけで、誰かんちを訪問することはないだろう。
それでも俺んとこに来たってことは、なんかレスキュー頼みたいことができたか。
だが、ついさっきまで消え入りそうな声を出して、ありったけの勇気をふりしぼってやって来たことを物語っていた聖の視線が、俺の怪我している右腕に行くと、途端におどおどした態度はどっかへ行って、堂々とした本来の聖の姿が、一瞬だけ現れた。
おいおい、やべーよ、そのギャップは。
やっぱこいつには、逆境にくじけない強さがある。
それってモロ、俺が好きな女のタイプなんだよなぁ。
まだ引き返せるかもしれない。
だが、聖を守りたい、甘やかしたいという気持ちは、本人を目の前にしていると、一秒ごとに募っていくばかりで、俺自身も止めようがないところまで来てるようだ。
だから「洗濯機を貸してほしい」という聖にとっては切実な願いに、俺は便乗することにした。
聖のことをもっと知りたいという自分の気持ちに従って。
そして聖の心に近づくために。