キャッチ・ミー ~私のハートをつかまえて~
ジングルベル (野田和人視点)
子どもたちは聖からのプレゼントを、とても喜んでくれた。
マフラーだけじゃなく、包装にも「すてき!」と感激していた女の子がたくさんいた。

「カズ兄ちゃんが包んだんじゃないよね?」
「違う。俺こんなにキレイにできねえもん」
「知ってる」
「あ?なんか言ったか」
「ううんっ!!」
「包装は俺の彼女がしてくれたんだよ。この紙とリボンも、全部彼女が選んでくれた・・・」と俺が言ってる途中で、「えーっ!?カズ兄ちゃん、彼女いるのー?」と10歳のガキに言われてしまった。

その声を聞いた、同僚のマサとレイちゃんだけじゃなく、マサの友人で俺も親しくしている人気俳優兼歌手の「ノブ」こと、瓜生信長にまで「マジか」と言われてしまった。

「ねえねえ。それって、前言ってた“メシの彼女”?」
「黙秘権行使」
「そこで使うな」
「そうだ。もったいぶらずに吐け!」と言ったマサが俺をガバッと羽交い絞めにしたとき、俺のスマホが鳴った。

「あれ?野田っち、完全非番じゃなかったの?」
「いや。スタンバイ」と俺は言いながら、ポケットからスマホを出した。

「はい・・・いえ・・・・・・・・・・分かりました。今からそっちへ行きます」と俺は言うと、無意識に溜息を一つついていた。

「何」
「行方不明。誘拐の可能性有」

俺はすぐさまスイッチを切り替えると、早々に施設を後にした。



給料の支払いは振込が当たり前になり、ネットバンクが普及した今、昔よりも現金自体の流動は減った。
しかし冬のボーナスがもらえる12月は、強盗や殺人といった物騒な事件が起こる確率が高くなることもあり、多額の現金を持っている金融機関では警備を強化するのが一般的だ。

今行方不明になってるのは、5歳の男の子だ。
金と権力を持つ大手銀行頭取の孫でもあるため、誘拐された可能性がある。
身代金の要求に備えて、俺ともう一人の特別捜査員は、その子と頭取も住んでいる立派な邸宅で待機していたが、行方不明になってから24時間経っても連絡が来なかったため、身代金目的の誘拐である可能性は極めて低いと判断された。

金目当てじゃない。
頭取の家族が営利目的で孫を誘拐させた可能性はゼロ。
彼らは十分すぎる財産を持ってるしな。
ということは、頭取をはじめとした家族に恨みを持つ者の犯行か?


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