キャッチ・ミー ~私のハートをつかまえて~
謎の隣人(野田和人視点)
思ったとおり、隣の彼女は階段で降りやがった。
俺はフッと笑うと、ニャーニャー鳴いてる猫を俺の目線まで上げた。
「分かった分かった。ミルク飲ませてやるから」
・・・俺、猫に話しかけるほど疲れてんだなー。
とはっきり自覚しながら、俺は鍵を出すために猫を下におろした。
猫は俺の足元に頬を擦りつけながら、ニャーニャー鳴いている。
こいつも疲れているのか、人恋しいのか。
それとも単に腹が減ってんのか。
「ノラ。俺の靴に爪立てんなよ」と猫に命令しながら鍵を開けると、俺は野良猫のノラを初めてうちの中へ招き入れた。
・・・猫って牛乳飲むのか?
猫を飼ったことがない俺は、今頃疑問に思った。
だが、隣の彼女は、牛乳くれって言ったらくれたよな。
猫用ってーのは皿だけか?
弟の雄太じゃないが、分からんことはネットで調べることにした。
こんなことを朝の7時台に家族や友人に電話して聞くのは気が引ける。
それに両親や弟たちだって、犬猫飼ったことねえし。
と思いつつネットで調べてみたら、仔猫には牛乳を与えても良いことが分かったので、隣の彼女から預かった皿には水道水を入れた。
その皿をそっと下に置きながら、ノラの体格を見て、こいつは小さいが仔猫じゃねえよなと再確認する。
喉が渇いていたのか、ノラはすぐに皿に寄って水を飲み始めた。
そんなノラの頭を、俺は人さし指だけでよしよしと撫でながら、「俺は今からシャワー浴びてくるな」と言うと、ノラはニャーと一鳴きしてドアのほうへ歩いて行った。
「おいノラ。もう帰るのか?気紛れな奴だなーおまえは」と、また猫に話しかけながらドアを開けると、ノラはさっさと外へ出て行った。
・・・全く。便利な世の中になったもんだ。
こんな雑学もネットで調べればすぐわかるし。
なんて考える俺は、まだ40なんだが・・・人生80年と考えれば、折り返し地点に来てんだよな。
そもそも80まで生きられるかどうかも分かんねえし。
特にこんな仕事してると・・・。
この事件で殉職するかもしれないという気持ちを毎回抱えながら、俺は現場へ行っている。
その覚悟ができてなきゃ、自分の命をかけて犯人を捕まえることはできない。
俺は壁に両手をつくと、上から流れるシャワーの湯に、しばらく身を委ねた。
自分に染みついた事件の厄を、湯で洗い流すように。
昼近くまで寝た俺は、コンビニで買ってきたパンをサッサと食べると、洗濯をしている間に手早く掃除をすませた。
今回は5日間家を空けていたので、郵便物もそんなに溜まってないし、家も留守の空気を漂わせていない方だ。
と俺は思いながら、キッチンカウンターに視線を移した。
そこには、隣の彼女からもらった牛乳パックが置かれたままだ。
「どうすっかなー、これ」
俺は牛乳飲まねえし、ノラにはあげれねえことが判明したしなー。
もったいないが、捨てるしかねえか。
「隣の彼女はノラに牛乳あげてねえよな」と思いながら、俺は牛乳を流しに捨てた。
それから、クリーニングに出すものをまとめ、洗濯ものを片づけ終えた俺は、隣の彼女から借りたノラの皿を洗った。
それを拭いて今朝のコンビニ袋に入れると、メモ紙に伝言を書いて、それもコンビニ袋に入れる。
たぶん今日は、隣の彼女と遭遇することはないだろう。
戸締りと火の元、水回りを確認した俺は、夕方前に、また家を出た。
俺はフッと笑うと、ニャーニャー鳴いてる猫を俺の目線まで上げた。
「分かった分かった。ミルク飲ませてやるから」
・・・俺、猫に話しかけるほど疲れてんだなー。
とはっきり自覚しながら、俺は鍵を出すために猫を下におろした。
猫は俺の足元に頬を擦りつけながら、ニャーニャー鳴いている。
こいつも疲れているのか、人恋しいのか。
それとも単に腹が減ってんのか。
「ノラ。俺の靴に爪立てんなよ」と猫に命令しながら鍵を開けると、俺は野良猫のノラを初めてうちの中へ招き入れた。
・・・猫って牛乳飲むのか?
猫を飼ったことがない俺は、今頃疑問に思った。
だが、隣の彼女は、牛乳くれって言ったらくれたよな。
猫用ってーのは皿だけか?
弟の雄太じゃないが、分からんことはネットで調べることにした。
こんなことを朝の7時台に家族や友人に電話して聞くのは気が引ける。
それに両親や弟たちだって、犬猫飼ったことねえし。
と思いつつネットで調べてみたら、仔猫には牛乳を与えても良いことが分かったので、隣の彼女から預かった皿には水道水を入れた。
その皿をそっと下に置きながら、ノラの体格を見て、こいつは小さいが仔猫じゃねえよなと再確認する。
喉が渇いていたのか、ノラはすぐに皿に寄って水を飲み始めた。
そんなノラの頭を、俺は人さし指だけでよしよしと撫でながら、「俺は今からシャワー浴びてくるな」と言うと、ノラはニャーと一鳴きしてドアのほうへ歩いて行った。
「おいノラ。もう帰るのか?気紛れな奴だなーおまえは」と、また猫に話しかけながらドアを開けると、ノラはさっさと外へ出て行った。
・・・全く。便利な世の中になったもんだ。
こんな雑学もネットで調べればすぐわかるし。
なんて考える俺は、まだ40なんだが・・・人生80年と考えれば、折り返し地点に来てんだよな。
そもそも80まで生きられるかどうかも分かんねえし。
特にこんな仕事してると・・・。
この事件で殉職するかもしれないという気持ちを毎回抱えながら、俺は現場へ行っている。
その覚悟ができてなきゃ、自分の命をかけて犯人を捕まえることはできない。
俺は壁に両手をつくと、上から流れるシャワーの湯に、しばらく身を委ねた。
自分に染みついた事件の厄を、湯で洗い流すように。
昼近くまで寝た俺は、コンビニで買ってきたパンをサッサと食べると、洗濯をしている間に手早く掃除をすませた。
今回は5日間家を空けていたので、郵便物もそんなに溜まってないし、家も留守の空気を漂わせていない方だ。
と俺は思いながら、キッチンカウンターに視線を移した。
そこには、隣の彼女からもらった牛乳パックが置かれたままだ。
「どうすっかなー、これ」
俺は牛乳飲まねえし、ノラにはあげれねえことが判明したしなー。
もったいないが、捨てるしかねえか。
「隣の彼女はノラに牛乳あげてねえよな」と思いながら、俺は牛乳を流しに捨てた。
それから、クリーニングに出すものをまとめ、洗濯ものを片づけ終えた俺は、隣の彼女から借りたノラの皿を洗った。
それを拭いて今朝のコンビニ袋に入れると、メモ紙に伝言を書いて、それもコンビニ袋に入れる。
たぶん今日は、隣の彼女と遭遇することはないだろう。
戸締りと火の元、水回りを確認した俺は、夕方前に、また家を出た。