キャッチ・ミー ~私のハートをつかまえて~
「・・・あなた以前、“神様に慈悲心なんてないと思ってた時期もあったけど、誰かのせいにすることを選んでいたのは自分だと気がついた”、“人はみんな違う人生を歩んでいるという意味で、不平等だと思う”と、野田の弟の彼女に話したでしょ」
「え?あ・・・あぁ、はい、たぶん・・」
「実はね、東京で起きた二つの事件で、犯人が書いたと思われるメモ紙が発見されたの。最初は“神に慈悲はない”、そして次は“人生は不平等だ”」
「・・・・わ。なんて偶然・・・」
「それを聞いた野田は、逆にあなたが犯人じゃないと確信したの。でもその後でまた事件が起こった。メモに書かれたメッセージ。加えてペンダント。あなたが失くした時期と、子どもが連れ去られた可能性が高いデパートに、あなたは犯行時間と思われる時間帯に行ってたでしょ。ホント、偶然が重なり過ぎたのよね」
「なんか・・・“偶然”っていうより、“不幸”って言った方がいいかもしれない・・・」と私がつぶやくと、運転中の鬼塚さんは、前を見たままクスッと笑った。
「そうかもね。とにかく、それを聞いた敷島は、あなたが犯人かもしれないと思ったから、野田を捜査メンバーから外して、あなたを参考人としてしょっ引いてきた。まったく・・・どこまでアホなんだか。あいつは絶対、うちの課に入れない!」
と、憤慨している鬼塚さんに、他人事のように同情の笑みを浮かべた私は、お人よしなんだろうか・・・。
「私、野田があんなに怒ったところは初めて見た」
「でもあの人・・・疑ってたんですよね、私のこと」
「うーん・・・そうね。たぶん。捜査官というより、プロファイラーという仕事柄、それは仕方がないことかもしれない」
「プロファイラー?」
「そ。主に現場の手がかりから犯人像を形づくる仕事」
「あぁ。それで・・・」
「思ってることをズバッと言い当てられるでしょ」と運転中の鬼塚さんに言われた私は、ハハッと笑うことで肯定の返事をした。
「野田の場合、犯人を捕まえることも仕事だからね。プロファイルして終わり、じゃないのよ。特に私と夫が率いる特別捜査課は、危険度と難易度が他の捜査課よりも高いから、毎回命かける度合いはおのずと高くなる」
じゃあ、この前野田さんが右腕を怪我していたのは、それで・・・。
あのとき「ちょっと切った」って言ってたけど、本当は「ちょっと」どころじゃなかったのかもしれない・・・あぁもう!
野田さんの、しかも過ぎたことをいちいち心配してる私って・・・!
「あなたは野田が創ったプロファイル像に、ある程度当てはまっていた。だからあなたのことを疑っていた時期はあったかもしれない。でも野田はあなたが無実だと信じてたわよ。だから捜査チームから外されても、犯人を割り出すことに全力を注いだの。そして部下である野田が、あなたは無実だと信じていたから、私たち特別捜査課全員、あなたは無実だと信じて犯人割出しに協力したのよ」
「・・・ありがとう、ございます」
「お礼はいらない。形はどうであれ、これは警視庁側の失態だから。心細かったわよね。本当にごめんなさい」
「いえ」
「え?あ・・・あぁ、はい、たぶん・・」
「実はね、東京で起きた二つの事件で、犯人が書いたと思われるメモ紙が発見されたの。最初は“神に慈悲はない”、そして次は“人生は不平等だ”」
「・・・・わ。なんて偶然・・・」
「それを聞いた野田は、逆にあなたが犯人じゃないと確信したの。でもその後でまた事件が起こった。メモに書かれたメッセージ。加えてペンダント。あなたが失くした時期と、子どもが連れ去られた可能性が高いデパートに、あなたは犯行時間と思われる時間帯に行ってたでしょ。ホント、偶然が重なり過ぎたのよね」
「なんか・・・“偶然”っていうより、“不幸”って言った方がいいかもしれない・・・」と私がつぶやくと、運転中の鬼塚さんは、前を見たままクスッと笑った。
「そうかもね。とにかく、それを聞いた敷島は、あなたが犯人かもしれないと思ったから、野田を捜査メンバーから外して、あなたを参考人としてしょっ引いてきた。まったく・・・どこまでアホなんだか。あいつは絶対、うちの課に入れない!」
と、憤慨している鬼塚さんに、他人事のように同情の笑みを浮かべた私は、お人よしなんだろうか・・・。
「私、野田があんなに怒ったところは初めて見た」
「でもあの人・・・疑ってたんですよね、私のこと」
「うーん・・・そうね。たぶん。捜査官というより、プロファイラーという仕事柄、それは仕方がないことかもしれない」
「プロファイラー?」
「そ。主に現場の手がかりから犯人像を形づくる仕事」
「あぁ。それで・・・」
「思ってることをズバッと言い当てられるでしょ」と運転中の鬼塚さんに言われた私は、ハハッと笑うことで肯定の返事をした。
「野田の場合、犯人を捕まえることも仕事だからね。プロファイルして終わり、じゃないのよ。特に私と夫が率いる特別捜査課は、危険度と難易度が他の捜査課よりも高いから、毎回命かける度合いはおのずと高くなる」
じゃあ、この前野田さんが右腕を怪我していたのは、それで・・・。
あのとき「ちょっと切った」って言ってたけど、本当は「ちょっと」どころじゃなかったのかもしれない・・・あぁもう!
野田さんの、しかも過ぎたことをいちいち心配してる私って・・・!
「あなたは野田が創ったプロファイル像に、ある程度当てはまっていた。だからあなたのことを疑っていた時期はあったかもしれない。でも野田はあなたが無実だと信じてたわよ。だから捜査チームから外されても、犯人を割り出すことに全力を注いだの。そして部下である野田が、あなたは無実だと信じていたから、私たち特別捜査課全員、あなたは無実だと信じて犯人割出しに協力したのよ」
「・・・ありがとう、ございます」
「お礼はいらない。形はどうであれ、これは警視庁側の失態だから。心細かったわよね。本当にごめんなさい」
「いえ」