キャッチ・ミー ~私のハートをつかまえて~
ピンポーンというドアチャイムの音が鳴った私は、思いっきり体をビクつかせた。
え?今夜の8時過ぎだよ?
宅配便の配達なんてありえないし。
セールス?勧誘?
でも今までそういう人たち、ここには一度も来たことがない。
一体誰・・・。
私は恐る恐るドアの方へ近づいた。
あんまり怖くて、及び腰な斜め歩きになってるけど・・・誰も見てないからいいよね?
と自分に許可を出したそのとき、またピンポーンと鳴った。
う、うわっ!どうしよ・・・あ、そうだ!
今頃インターホンの存在を思い出した私は、さっきまでの及び腰はどこへやら、サッとインターホンのところへ駆け寄って、受話器を取り上げた。
「・・はい」
「隣の野田です」
「・・あ・・・」
いざとなったら警察呼ぶから!
とまで意気込んでいただけに、野田さんの声を聞いたとき、私はその場にへなへなと崩れ落ちそうになってしまった。
な・・・んだ。野田さんか。
確かに、今の声は野田さんに間違いない。
心の奥までホッと安堵した私は、深呼吸を一度して気を取り直すと、ドアを開けに行った。
「どうした」
「え。なにも・・・」
「なんで俺の顔見て泣きそうな顔してんだよ」
「そっ、それは、誰かと思ったから、ビックリして。でも野田さんだったから・・・」
「悪い。夜遅く来てごめんな」
「いえっ、大丈夫です。ホントに」と私は言うと、勢いよく顔を左右にふった。
そのとき、「そろそろおたくの名前、教えて」という野田さんの声が聞こえた私は、ピタッと静止したまま野田さんを仰ぎ見た。
・・・この人、意外と背が高い。
なんて、今は全然関係ないじゃない!
「は?」
「そっちは俺の名前知ってるのに、俺はおたくの名前をまだ聞いてない」
「あああぁ。そうでしたね、はい」
もしかしてこの人は、私の名前を聞きたくて、夜の8時過ぎにうちに来たのだろうかと訝りながら、私は「中窪です」と言った。
「なかくぼ、何」
「え。ええっと・・・ひじり、です」
「ひじり・・・。どう書くんだ?平仮名?」と野田さんに聞かれた私は、顔を左右にふって否定した。
「聖書の聖って書いて・・・」
「あー、なるほど。あの字か」
と言う野田さんは、妙に納得した、みたいな顔をして頷いている。
「隣人のよしみで、よろしくな」
「あ。こ、こちらこそ」
この人、引っ越してきて2ヶ月ちょっと目にして、挨拶に来たのかしら・・・。
ここは単身者用のマンションということもあって、引っ越してきても挨拶に来ることは珍しいと思う。
私は挨拶に行ってないし、反対側のお隣さんのことは、いまだに知らないし。
「これで聖は、俺のこと怖がる必要ねえな?」
「い、いえ。元々怖くない、ですよ」
・・・ん?
今野田さん、私の名前言わなかった?
気のせい?
「俺さ、よく女(おんな)子どもにはビビられるからなー。そういう顔してんのは分かってるが、整形してまで変えようとは思わねえし」
「うーんと、野田さんの場合、顔っていうより、目つきとか雰囲気が怖・・いっていうか!えっと、そうじゃなくて、鋭いんだと思いま・・・す」
あぁどうしよう!
今の私の発言は、「結局野田さんのことが怖い」って言ったも同然だし!
野田さん、怒ってるよね。
うぅ、野田さんの顔、またまともに見れない。
このままドア閉めて「永遠にさようなら」したほうがいいかしら・・・。
とまで思いつめていただけに、野田さんがクスクス笑う声を聞いた私は、つい顔を上げて野田さんの顔を見てしまった。
え?今夜の8時過ぎだよ?
宅配便の配達なんてありえないし。
セールス?勧誘?
でも今までそういう人たち、ここには一度も来たことがない。
一体誰・・・。
私は恐る恐るドアの方へ近づいた。
あんまり怖くて、及び腰な斜め歩きになってるけど・・・誰も見てないからいいよね?
と自分に許可を出したそのとき、またピンポーンと鳴った。
う、うわっ!どうしよ・・・あ、そうだ!
今頃インターホンの存在を思い出した私は、さっきまでの及び腰はどこへやら、サッとインターホンのところへ駆け寄って、受話器を取り上げた。
「・・はい」
「隣の野田です」
「・・あ・・・」
いざとなったら警察呼ぶから!
とまで意気込んでいただけに、野田さんの声を聞いたとき、私はその場にへなへなと崩れ落ちそうになってしまった。
な・・・んだ。野田さんか。
確かに、今の声は野田さんに間違いない。
心の奥までホッと安堵した私は、深呼吸を一度して気を取り直すと、ドアを開けに行った。
「どうした」
「え。なにも・・・」
「なんで俺の顔見て泣きそうな顔してんだよ」
「そっ、それは、誰かと思ったから、ビックリして。でも野田さんだったから・・・」
「悪い。夜遅く来てごめんな」
「いえっ、大丈夫です。ホントに」と私は言うと、勢いよく顔を左右にふった。
そのとき、「そろそろおたくの名前、教えて」という野田さんの声が聞こえた私は、ピタッと静止したまま野田さんを仰ぎ見た。
・・・この人、意外と背が高い。
なんて、今は全然関係ないじゃない!
「は?」
「そっちは俺の名前知ってるのに、俺はおたくの名前をまだ聞いてない」
「あああぁ。そうでしたね、はい」
もしかしてこの人は、私の名前を聞きたくて、夜の8時過ぎにうちに来たのだろうかと訝りながら、私は「中窪です」と言った。
「なかくぼ、何」
「え。ええっと・・・ひじり、です」
「ひじり・・・。どう書くんだ?平仮名?」と野田さんに聞かれた私は、顔を左右にふって否定した。
「聖書の聖って書いて・・・」
「あー、なるほど。あの字か」
と言う野田さんは、妙に納得した、みたいな顔をして頷いている。
「隣人のよしみで、よろしくな」
「あ。こ、こちらこそ」
この人、引っ越してきて2ヶ月ちょっと目にして、挨拶に来たのかしら・・・。
ここは単身者用のマンションということもあって、引っ越してきても挨拶に来ることは珍しいと思う。
私は挨拶に行ってないし、反対側のお隣さんのことは、いまだに知らないし。
「これで聖は、俺のこと怖がる必要ねえな?」
「い、いえ。元々怖くない、ですよ」
・・・ん?
今野田さん、私の名前言わなかった?
気のせい?
「俺さ、よく女(おんな)子どもにはビビられるからなー。そういう顔してんのは分かってるが、整形してまで変えようとは思わねえし」
「うーんと、野田さんの場合、顔っていうより、目つきとか雰囲気が怖・・いっていうか!えっと、そうじゃなくて、鋭いんだと思いま・・・す」
あぁどうしよう!
今の私の発言は、「結局野田さんのことが怖い」って言ったも同然だし!
野田さん、怒ってるよね。
うぅ、野田さんの顔、またまともに見れない。
このままドア閉めて「永遠にさようなら」したほうがいいかしら・・・。
とまで思いつめていただけに、野田さんがクスクス笑う声を聞いた私は、つい顔を上げて野田さんの顔を見てしまった。