晴れ女
思わずその場に座り込みそうになるのをぐっとこらえ、人の波に飲まれない様なちょっとした路地に入り、壁にもたれ掛かった。



「あ……さ、ひっ……」



熱い涙がボロボロとこぼれ、両手で口と鼻を押さえると人差し指が目頭に当たり、止めどなく溢れだした。



――あの瞬間……

朝陽は確かに”由紀”だけしか見えてなかった。

それがたまらなく悔しくて情けなくて。


こんな人混みであんなに小さく蹲る”由紀”を顔も見ずに見つけた朝陽。



しかも”由紀”に向けられている朝陽の視線は私にはきっと一生向けられる事がないもの。
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