むせかえるよな倉庫の片隅で


「ええと、ライターのオイル……」


商品のJANコードのメモ(バーコードの下に書いてある数字)を手に、倉庫内を歩き回る。


たしかにデータにあった場所には在庫がなく、いつも棚に入りきらない商品が置いてある通路の脇にも、見当たらない。


「どこに置いたんだろう?」


入荷した商品をどこにしまったのか把握しているはずのリフトのパートさんが、今日はいない。


もっともその人がいたって、忙しいときに適当に空いた場所に置いておいて、行方不明になってしまう商品もあるのだけど。


ピッキングのパートさんとちらほらすれ違いながら、私は倉庫の一番端にたどり着いた。


「ここらへんじゃないかなあ……」


倉庫の中は大きく雑貨エリアとお菓子中心の食品エリアとに分かれている。

ライターのオイルを食品コーナーに置くことはしないので、雑貨エリアをくまなく探すと、いつの間にかこんな片隅に来てしまった。


周りは金属の骨組みだけの棚に、お香が所狭しと並んでいる。


「すごいにおい……」


アロマオイルだとか車内用フレグランスだとか、スティックタイプのお香だとかがそれぞれ何種類もあって、それぞれから強烈なにおいがする。


少し嗅ぐだけならまだしも、こんな臭いの洪水に巻かれたら、鼻がやられて頭がぼーっとしちゃう。



< 3 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop