裏腹王子は目覚めのキスを
「お前も一緒に帰るんだよ」
「え」
「どうせ隣の家なんだし、一緒に帰ったほうが何かと効率的だろ」
「効率的……?」
考え込むわたしをよそに、彼は怒ったようにご飯をかきこんでいく。
日が落ちてわずかに蒸し暑さの薄れた室内で、かすかなモーター音が空気を震わせている。
部屋の角に置いた羽のない縦長の空気清浄機付きファンが、暑がりのトーゴくんの熱を冷ますように風を送っていた。
「だから旅行はダメだ」
王子様に念を押され、わたしはやむを得ずうなずいた。
「……わかった」
確かに、となりの家のトーゴくんが帰省するのに居候のわたしだけが残って彼の留守を預かるなんて、おかしいかもしれない。
健太郎くんに電話して断らなきゃ。
トーゴくんは無言のまま食事を進めている。
その不貞腐れたような態度を疑問に思いながら、わたしは健太郎くんの番号を呼び出して携帯を耳にあてた。