裏腹王子は目覚めのキスを
取りなすように微笑むみのりちゃんを見て、なるほど、と心の中でうなずいた。
ほんのり焼けた肌にエスニック調なワンピースとターコイズのピアス、そしてウッドビーズのブレスレット。
アジアが大好きだというだけあって、彼女はアジアンテイストなファッションがよく似合う。
そんなみのりちゃんと桜太が……。
「そっかぁ。結婚……」
驚きと喜びと戸惑いとが胸の中でごっちゃになって、なんともいえない気持ちになる。
思い返してみれば、わたしの地元の同級生たちは既に半数以上が結婚していて、桜太の歳で所帯を持った子だって普通にいる。
だから特段不思議なことではないのだけれど……。
「でも桜太、まだ二十二だよね……」
「来年は二十三だし。俺早く落ち着きたいもん。子どももほしいし」
弟と将来の話なんてしたことがなかったから、そんなふうに考えているなんて意外だった。
「お父さんたちにはもう話したの?」
「ああ、母さんなんてもう大喜び。みのりが忙しいときは子どもの世話は任せなさいって、気が早いこと言ってたし」
「そ、そう」
いろんな感情が混ざり合った中に、わずかに浮上したのは焦りだ。
弟はわたしより五歳も年下なのに、社会に出る準備を着々と進めて、かつ結婚なんていう人生の大きなイベントを実行しようとしている。
「結婚……か」
テーブルに両肘をついて組んだ手の上にあごをのせると、自然とため息がこぼれた。
四人掛けのダイニングテーブルに、みのりちゃんの椅子と彼らの子どもの椅子、ふたつ分の席を増やすところを想像する。