裏腹王子は目覚めのキスを
もし健太郎くんと結婚したら、わたしはどういう生活を送るんだろう、と考えようとしても、頭の中に具体的なイメージが湧かない。
一緒に過ごす時間はきっと穏やかだと確信できるのに、感情を出さない健太郎くんと、この先何を一緒に喜び、何を一緒に哀しむのか、まったく想像がつかない。
そもそも結婚って、いったい何……?
果てはそんなことまで考えこんでしまい、答えがでないまま思考が停止する。
働かない頭に連動して身体まで動かなくなる。
ソファの上でしばらくぼうっとしていると、玄関の鍵を開ける音が聞こえた。
「おう、何寝っ転がってんの」
リビングに姿を現したトーゴくんが、ネクタイを緩めながらわたしを見下ろす。
「ううん、なんでもない。おかえりなさい。お夕飯は?」
身を起こしながら訊くと「食う」と答え、トーゴくんは腕に抱えていたジャケットをハンガーにかけた。
キッチンに入って準備をしていると、彼は冷蔵庫からウーロン茶のペットボトルを取り出し直接口をつける。
「そういや、お前、このあいだの面接はどうだった?」
背後からの声に、わたしはフライパンを握ったまま硬直した。
「そ……それが」