裏腹王子は目覚めのキスを
「その男、なんか変だろ。はたから見てると、お前のことをちゃんと好きなように思えねえんだよ」
思いがけないセリフに、一瞬あっけにとられた。
「な、なんでよ。健太郎くんはわたしのことをちゃんと考えてくれて、何が一番いい方法か、わたしが間違えないようにしてくれてるんだよ。いつもわたしのためって言ってくれて――」
結婚の話だって、仕事が決まらないわたしのために、彼が考えてくれたことだ。
胸の奥がざらついて真っ向から反論すると、トーゴくんはバカにしたように笑った。
「そうか? 俺の目には、その男がお前から思考力を奪って、丸め込んでるようにしか見えない」
「な……」
「お前のためだ――なんて普通、恩着せがましく言うか? おまけに励ますどころかお前をへこますようなことばっか言ってんじゃねえか」
テーブルにぶちまけられた言葉に、声も出ない。
固まっているわたしに、トーゴくんは皮肉っぽく口端をつり上げる。
「相手を散々こき下ろしてダメな人間だと落ち込ませて、自分にはもうこの人しかいないと思わせる。洗脳の常套手段じゃねえか」
あまりにも突飛な憶測に、開いた口が塞がらなかった。
トーゴくんはいったい何を言っているの?
「羽華……お前はいつも、物事を自分のせいにしすぎ」
呆然としているわたしを見て、彼はどこか確信めいた口調で言う。