裏腹王子は目覚めのキスを
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出ていくことを決めたものの、トーゴくんと実際に顔を合わせるとなかなか切り出せなくて、すべてを話す機会が訪れたのは、結局、旅行を3日後に控えた火曜日になってからだった。
ここ数日帰宅が遅くて忙しそうだった彼が、久しぶりに午後九時前に帰ってきたと思ったら、さっさと夕食を済ませ、自分の部屋からリビングにキャリーバッグを持ち出してきた。
黒いハードキャリーは飛行機の機内持ち込みが可能な小型サイズで、お盆に帰省したときに彼が使っていたものだ。
「俺、明日から三日間、出張だから」
ネクタイを外しスーツのジャケットを脱いだトーゴくんは、キッチンで後片付けをしているわたしを見て言った。
「帰ってくるのは金曜の夜になると思うから、留守番頼む」
わたしは一瞬、返事をするのを忘れた。
すぐさまエプロンのポケットから携帯取り出し、カレンダーを確認する。
やっぱりというか、当然というか、トーゴくんが3日後の金曜の夜に帰ってくるとなると、同じ日に出発するわたしとは完全な入れ違いだ。
小さな焦りが身体の底からじわじわと這い出してきて、携帯を持つ手が震えた。
トーゴくんの帰りを待ってても、話はできない。
それならもう、今しかない。
わたしは腹をくくった。