裏腹王子は目覚めのキスを

「羽華。お前が心の底で想ってんのは、俺だろ?」
 

上から押さえつけるような傲慢な言葉なのに、胸がきゅっと締まる。

「な、なにを言って……」
 
口ではそう返しながら、わたしの心臓は痛いくらい脈打っていた。

それを見透かしたように、トーゴくんはさらに顔を寄せてくる。


「言えよ。お前が好きなのは、俺だろ?」

 
彼の身体と壁に挟まれて、逃げられない。
 
胸が鼓動するたびに、痛みが全身を覆うようだった。
 
結婚したい女の人がいるくせに、なんてひどい男。
 
威圧的に迫ってくる王子様は、それでもやっぱり美しくて、わたしは泣きそうになりながら答える。


「嫌い……トーゴくんなんか」
 

その瞬間、「ちっ」と舌打ちが聞こえた。


「好きって言えよバカっ」

 
よける間もなく上を向かされ、唇を塞がれる。
 
想像もしていなかった柔らかな感触に、わたしは硬直した。

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