裏腹王子は目覚めのキスを

すぐに我に返り、目の前の身体を押しのけようとする。

「んんっ」
 
もがこうとするわたしを強引に壁に押しつけて、彼はキスを深いものに変えた。
 
口内に入りこんだ慣れない舌の感触に、背筋がびりびり震える。
 
両手を掴まれて身動きが取れないまま、トーゴくんの唇に翻弄され、酸素が薄れていく。 

「や、あ」
 
息苦しさにあえぐと、ようやく彼は顔を離した。
 
肩で息をしながら、どうにかトーゴくんを振り払おうとした瞬間、足元の感覚が消えた。

「きゃあっ」
 
いきなり抱えあげられて、わたしはとっさに彼のシャツにしがみつく。

「トーゴくん!?」
 
わたしの声を無視し、彼は寝室のドアをくぐり抜ける。
リビングの照明が差しこむだけの薄暗い部屋のなかを、トーゴくんは迷わず進んでいく。

「ちょっ」
 
声を上げようとしたとき、セミダブルのベッドに放り出された。

オフホワイトのシーツの海で、わけが分からないまま、スプリングに弾む視界にトーゴくんを認める。

わたしに覆いかぶさるようにベッドに上った彼は、薄明りに照らされ、わずかなほつれもないほど表情を引き締めていた。
 
見たことのない真剣な顔に、胸が苦しくなる。

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