裏腹王子は目覚めのキスを

あとの面倒を考えて、王子様は近しい間柄の女の子には手を出さないはずだったのに。

「他の女の人にするみたいに、わたしに触らないで……」
 
胸の痛みをこらえながら、訴えるように口にする。

わたしは、幼なじみのままでいたい。
 
トーゴくんにとって通過点でしかない “その他大勢の女の人”には、なりたくない。
 
ふと視界が揺れた。両手を取られ、シーツの上にあっというまに組み敷かれる。

わたしの訴えにもかかわらず、トーゴくんはベッドを下りようとしなかった。

「やっ」

「聞け」

「やだ」

「聞け、羽華!」 
 
余裕の欠片もない、だけど芯のある強い声に、目を上げる。
 
薄明かりに浮き上がる美しい顔。
それを歪め、トーゴくんはわたしにのしかかったまま低く言い放った。

「俺は、自分のベッドで女を抱いたことは、一度もねーよ!」
 
必死な声に、あっけにとられる。

「な……」
 
なにそれ、とつぶやく前に唇が下りてきて、また呼吸を奪われる。
 
唇から首筋に下りていく熱い吐息がくすぐったくて、身体が震えた。

「あ、やっ」
 
ブラウスのボタンを外されそうになり、精一杯抵抗した。
それでもトーゴくんの唇に耳をくすぐられ、すんなり許してしまう。

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