裏腹王子は目覚めのキスを
シェードを開けると、大きなキウイフルーツみたいな形の窓の向こうに朝焼けが広がっていた。
高度一万メートルから見ると、遥か彼方の地平線が地球の形に沿って帯状に光っている。
赤みの強い、オレンジ色の光。
太陽が、目覚める準備をしている。
「羽華子、それ食べないの?」
右隣に座った健太郎くんが、わたしの座席テーブルを指差す。
早朝に提供された機内サービスは、メインが鳥そぼろと錦糸卵のごはんで、サイドディッシュがマカロニサラダと蕎麦という、意外にもボリュームたっぷりな朝食だった。
「あんまり食欲なくて。食べる?」
わたしはデザートのカットフルーツだけを食べ終えた機内食を、健太郎くんに差し出した。
目的地であるチャンギ空港までは、約6時間のフライトだった。
夜遅くに日本を発ったこの飛行機も、あと数十分で着陸態勢に入る。
「昨日の夜もほとんど食べてなかったんじゃない? まさか、具合でも悪い?」
隣から顔を覗き込まれて、あわてて首を振った。
「う、ううん。ちょっと寝不足なだけ……」
実際、わたしはここ数日ほとんど寝ていなかった。