裏腹王子は目覚めのキスを
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トーゴくんと一夜をともにしたあと、わたしが目を覚ましたのは、太陽がもうずいぶんのぼってからだった。
窓から差しこむ陽光は燦然としていて、遮光カーテンを閉めていても隙間から漏れ出す光で部屋全体が明るい。
身体をベッドに横たえたまま、わたしはしばらく動けなかった。
全身の筋肉がストライキでも起こしたみたいに、だるい。
首だけを動かして見ると、広いベッドにはわたしだけ。
リビングのほうからも物音は聞こえない。
部屋の主はもう、出かけてしまったのだ。
いつの間にか掛けられていた布団を捲ると、何も身につけていない自分の身体があらわになって、トーゴくんとの行為が夢ではなかったことを語っていた。
身体に残る気だるさにも、胸に残った唇の痕にも、よれたシーツの模様にも、部屋に漂う匂いにも、すべてにトーゴくんの気配が残されていて、わたしは枕に顔を押しつけた。
気持ちを、どう消化すればいいのかわからなかった。
自分でも気づかないうちに心の底にしまいこんでいた感情を、トーゴくんはリボンをほどくようにあっさりと開けてしまった。