裏腹王子は目覚めのキスを

ダイニングテーブルにはカバンが放り出してあって、ノートパソコンを取り出しかけた形跡がある。
 
まさか、これからまた仕事するんじゃないよね。
 
冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出してコップに注いだときだ。
 
リビングの扉が開いて、トーゴくんが姿を現す。

「ん? まだ起きてたのか」

「あ、ううん、ちょっとお水飲みに――」
 
そこまで言って、ぎょっとした。
 
両手に持ったコップとペットボトルを両方とも落としそうになる。
 
毛先から滴り落ちる水滴。
ほんのり赤みを帯びた顔に、湿った肌。

かろうじて腰にバスタオルを巻いただけのむき出しの裸身に、わたしは慌てて顔を逸らした。
 
耳の奥で鼓動が響く。
 
足音が動いて、横目で見るとトーゴくんがキッチンに入ってきた。と思ったら、そのまま近づいてくる。

「え……」
 
思わず一歩引くと、トーゴくんはそれを上回る歩幅で間合いを詰めた。
じりじりと、彼は無表情のまま迫ってくる。

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