裏腹王子は目覚めのキスを
「な……なに?」
壁際に追いやられて、目のやり場に困った。
男の人の裸ならお風呂上がりのお父さんや弟のものでそれなりに慣れていたはずだけど、トーゴくんのそれはまるで違う。
男という生物学的見地から見れば同じでも、わたしの心臓がまったく別物だと叫んでいた。
上気した肌は、比べようもなく色気に満ちている。
「ト、トーゴくん!?」
表情を変えないままわたしを見下ろす彼からは、せっけんの香りが漂う。
心臓は今にも破裂しそうだった。
巨大な心音で、他の音がかき消される。空気さえ震わせていそうだ。
彼の手が、わたしに伸ばされる。
「ちょ……」
細く引き締まった身体に押しつぶされそうになって、わたしはとうとう目をつぶった。
その瞬間、持っていたペットボトルを奪われる。
「へ……」
すぐ目の前で、トーゴくんの喉仏が生き物のように動いていた。
ごくごくと水をあおると「ん」とわたしの手にペットボトルを戻す。そして彼はいきなり吹き出した。
「なんつー顔してんだよ」
ククっと唇の端で笑う彼に、頬が燃えた。
か、からかわれた!?
恥ずかしいのと悔しいのとで、喉の奥が変に痙攣する。