イチゴミルク *
「イチゴミルク飲めないよ?」
飲めないわけではないけど、
きっと傷にしみると思うんだ。
藤田くんにだけ聞こえるようにそう言うと、肩がピクッと動いて、
そして顔をゆっくり上げた。
目が合うと、藤田くんはすぐに目を逸らした。
ほら…早く冷やさないから、殴られたとこが青紫になっちゃってる…。
「…保健室行く?」
もう一度優しく聞くと、藤田くんは何も言わず席を立った。
イチゴミルクで釣れるとは思わなかった…。
そんなにイチゴミルクが好きだったとは。
先に教室を出て行く藤田くんの背中を、小走りで追った。
出て行くときに友里を見たら、
『おめでとう』と口パク。
何がおめでとうなんだ?
保健室に連れて行けたことかな。
でも、あたしが行こうって言って
来てくれたことは素直に嬉しい。