嫉妬のワケがない。
「テメェが他の男と……その、夜を一緒に過ごすとか、イヤなんだよ」

「……」

「こんなこと、言える立場じゃねェのは分かっているし、俺らしくねェのも分かっている。だが……」

「うふふ」

「ンだよっ?!」


 突如、笑い出した幸恵に、俺の顔はカッと熱くなる。言い慣れていない言葉を吐いたせいか、幸恵に笑われて羞恥心が襲ってきた。


「勘違いしている竜司も、面白いなぁって思っただけ」

「あ?勘違い……?!」


 この俺がいつ勘違いをしたっていうんだ?


「さっきの人は、私に借りを作っていた人。私が貸していたお金を返してくれるっていうから、会おうってなっただけ。それ以上でも、それ以下でもないのよ?」

「は?……はっ?」


 幸恵の口から淡々と出る言葉に、理解力が追い付いてくれない。

 裏の見えない女ではあるが、こういう場の時に嘘をつくような女でもないから、幸恵の言っていることは真実なんだろうが……。

 それにしても……はっ?借り?お金を返してもらうために会っていた?


「ンだよ……」


 本当に、俺の勝手なただの勘違いじゃねェか……。マジで恥ずかしいったらありゃしねェんだけど。最悪だ。穴があったら入りたい。
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