恋の捜査をはじめましょう
出番を果たした…、白い封筒。

女31歳、心機一転!

平穏無事に…本厄年を過ごせそうだ、と。

そう……思っていたのに。


事件は…現場に限らず、
ホームグラウンドで……待っていることも…あったのだ。





4月――…。


新しい顔が、ちらほらと見られる……と、ある、所轄の警察署内。


辞令が交付されるこの日は…
異動してきた者との、初の顔合わせとなる。

どこの会社でもそうであろうが…
皆、多少は緊張しているものである。

どんな人物が仲間になるのか、興味も…尽きない。


さて。

こちら…刑事第一課。

課長の脇には、新たに赴任してきた者が…数名並んで。
私達は、その向かい側へと…立っていた。

警察人生40年超の相原係長には…毎年恒例の、馴れた行事なのであろう。

はたまた、宿直明けで、睡魔が襲って来ているのか…

私の横で、呑気に…あくびなどしている。

一方の私は、と言うと――…?


「…………。やっぱり…本厄なんだ…。」

そんなことを、ぶつぶつ呟いて。

魂が…抜けかかっていた。

課長はこほん、と1つ咳払いをして。私と相原係長とを交互に睨むと。

にこり、と、満面の作り笑いを浮かべてから……
彼らに、自己紹介を促した。

私は…俯いたまま。
一人ひとり、話し終える度に…ちらり、と視線を上げては…名前と顔との一致を志し、拍手ををしながら…その場をやり過ごそうとする。


叩く手が…から回っている気さえする。

そんな私の異変に、相原係長が気づかないハズもなく――…。


突如、背中にバシっと、愛のムチが飛んできた。

「ひいっ」と…、つい、声を上げて。

背筋がピンと伸びて…、おまけに、真っ正面を向いた私の視線は。

次に口を開いた、ある男の視線と……

バッチリと絡み合った。


「〇〇署より異動して参りました、柏木晴柊です。」

その男の名前、

カシワギ セイシュウ…。

「…宜しくお願い致します。」


何とわざとらしいことか。

この、挑むような…キツい視線。
そのくせ、他人行儀に深々とお辞儀する姿勢が男の意地の悪さを物語っているようだった。

容姿こそ、あの頃より随分落ち着いて…風格が出てきたものの…。

口の端っこが、微妙につり上がっている。

上から目線のこの態度…


人間とは、そうそう、そのタチは変わるもんじゃあない。




そう………、私たち所轄の警察官のほとんどが、地方公務員。

異動とは言えど、県内を転々とするのが…現状。


つまりは…、だ。

かつての仲間と…違う地で再会することもアリ。

いいえ……、仲間に限らず…

例え…それがお互いに、相容れない相手であろうと。

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