恋の捜査をはじめましょう
「意見があるなら、発言を許可しよう。」
この不穏な空気に、メスを入れたのは。
やはり秋川管理官に他ならない。
「………あるとすれば、亡霊の正体について…どうお考えになってるかをお聞きしたいです。」
「……『亡霊』?と、言うと?」
眉を潜めた管理官の表情が…険しくなる。
「ここでも『見えない』存在として扱われてるのでしょうか?見ないようにしているだけだと感じるのは、俺だけですか?」
「…………。」
「それじゃあ『ホシ』はいつまでたっても捕まえられない。ここで話してるだけじゃあ、堂々巡りでしょう。事件の背景に潜んでいるのは、亡霊なんかじゃあない。みすみす見逃している…生きた魂です。」
ヤツの語り口調は…あくまでもゆっくりと、けれど…、少し現実離れしているかのような話に。
その主旨を、ここにいる一体何人の人が…理解したのだろう。
誰も茶々を入れなければ…、取り合う相手も居なくて。
一方の柏木も…それ以上は言及もしなくて。
ただ、私を含む多くの捜査員の胸に…僅かな疑念を抱かせるのには十分なほど。
深いインパクトを落としたのであった。