恋の捜査をはじめましょう
1年の出鼻を挫かれる…衝撃的な事件であった。
柏木晴柊は、私と同じ年。
警察学校時代の…同期生。
同じ教場で切磋琢磨(?)してきた、最大の…ライバル、だった。
お互いに…何が気に食わないのか。
ヤツから言わせれば、間違いなく挙げて来るのは…。私の可愛いげのなさだろう。
とにかく…、いけ好かないヤツだった。
ルックスがいいことは…認めよう。
高い身長。
スッキリとした鼻筋に…程よく大きな目。
話す時の仕草や…自信に満ちた行動力。
おまけに…法学、実務、柔術。それら、警察に必須の能力を…かねそろえていて。
成績優秀。欠点のないような…男だった。
ただ、何が好かないのか…というと。
何をしても敵わないからと言ったら…負けを認めることになるから、それが確固たる理由には挙げない。
私が…女だから、か。どこかで…加減をするような生温さを持っていたからだ。
掛けて来る言葉は…情け容赦ないのに。
意地の悪さも…遠慮なく見せてくるのに。
本人にとっては、そんな意識もないかもしれないけれど…そう感じていた。
小さな勝負ごとも、駆け引きも…いつもヤツに分配が上がる。
携帯電話を回収されて…、思うように恋愛を続けられなかった私をよそに。地元の彼女とは、安定した関係を築いていたヤツを…恨めしく思ったこともあった。
いつだったか……、非常招集訓練で、寝起きの悪さが仇となった私は…一番遅れての、現場到着となった。
それをネタにされたり、かと思えば、自分の外出時に買ってきた強力な目覚ましドリンクを…こっそりくれたこともあった。
元来、私は…器用な方ではなくて。
要領も…良くなくて。
けれど、それを言い訳にすることは…許されず。
小さなミスを繰り返す…悪循環。
それをフォローしてくれたのは、同じ教場生。
それは、柏木も例外ではなくて。
ヤツが放つ言葉とは…裏腹に、
いつでも行動は…読めなくて。
翻弄されて。
こっちは常に…気を張らなければならなかった。
自分が、惨めに…ならないように。