恋の捜査をはじめましょう
警戒心、というより。完全に…緊張感を持つようになった……柏木との、対峙。

出来れば…二人きりは避けたい、と。

そう思った矢先……。


案外、その日は…早くに訪れてしまった。






薄暗い…廊下。

自分の歩く足音が……まるで幾重に重なるようにして。空間に…響き渡る。

警察署の…2階フロア。

電気のついた、刑事第二課。それから…生活安全課の部屋を…通り過ぎ。

女性専用トイレへと…向かう。


土日、女性警察官は日直だけを割り当てられていたのが…、一昨年から、施設が充実して、女性警察官用の宿直室が設けられた。

よって、必然的に…私にも宿直が回って来るのだが…。

これが、なかなか…………


………コワイ。


日中は、フロアをうろつけば…必ず人とすれ違うし、親しい者と雑談を交わしたりも…出来る。
賑やか、とまではいかなくとも。必ず人の声がするから…。
今のように、文字で表せば『しーん』といった世界は。

自宅で起こるそれとも…違う。

本日…、一課の宿直は。
私の他に…、柏木晴柊。気まずいこと、この上…ない。



夜の…11時半。

行う仕事は、日中より引き続いて。
捜査活動や…書類まとめ。

疲れ目に…、欠伸。

オマケに…夕食をとっていても、これくらいの時間には…小腹が空いてくる。



「カップ麺でも…食べようかな。」

怖さを払拭させる為に。
そんな独り言を呟いた…時だった。


「……………。」

カツ…、カツン…、と。
私のそれとは違う…もうひとつの足音が。微かに混じって…聴こえてきた。


誰かが部屋を出て来ようものなら。ドアの開く音が…聞こえた筈だ。

けれどここは…、警察署。
そう簡単に、一般人が…紛れ込むなど出来やしない。


振り返ろうか……?

大声を…出してみる?

それとも。様子を…見るべきか?


不安に駆られ…、その判断に…迷いが生じた。


試しに少し、歩くペースを上げてみる。


「………嘘…。」

もうひとつの足音が。

さっきよりも…背中に近づいて来る。

すっかり怖くなって……もっと、スピードを上げる。

……と、今度は。
相手の音も…速くなって聞こえる。


いよいよ観念した私は。
辿り着いたトイレの前で……。そこに入らずに、足を止めた。



さあ……、どう出てくる?!



次の行動は……、決めていた。

もし、侵入者だったならば。
素早く確保して……応援を、と。

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