恋の捜査をはじめましょう
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署までは、車に乗って…向かう。
途中、警察官舎で拾った相原係長は…
座った運転席の後ろで…大欠伸をしていた。
「…相原さん、お酒飲んだんですか?」
彼の唯一の楽しみは…、休日前の晩酌。
「これでも、9時以降は控えたんだがなあ、最近どうも抜けきれない。…悪いな。」
「……いえ、慣れてますから。」
そう、割りとこのパターン、多いですから。
「お前こそ、なんだその寝癖は。」
「…………。放っておいてください。ところで…放火…ですかね。」
「どうだろうなあ…?火が上がったのは平屋の角部屋からで、内部からの出火となると…。ともあれ、これで5件目だ。いよいよ本部(※県警察本部のこと)のおでまし…、かな。」
この2週間で…不審火の発生が4件続いていた。いずれもボヤ程度で済んでいたものの…、深夜から明け方の時間帯に発生していることは…共通している。
同一犯の可能性も視野に入れて、捜査を続けている。
さて、この5件目で、事態はますます…深刻化してきそうでは…あるのだが、果たして、連続放火犯…なのか?
「冬場の火事は多いから…何とも言えないな。」
バックミラー越しに垣間見えた、相原係長の真剣な表情からは…、市民が我々警察に訴える、不安や不満の声への懸念が…窺い知れる。
そこからは…互いに、無言を貫いて…
私は、運転へと集中する。
冬場の路面が…どんなに恐ろしいのかを、約1年程前に、身をもって…体感していたのだから、慎重にも、なる。
少し経った頃、係長は、目を閉じ…、腕組みをしながら、大人しく下を向いていた。
少しでも睡眠を取り戻そうとしているのか…?
早朝にも関わらず、道中幾らかの車と…すれ違う。
とりわけ多いのは、トラックなどの運送業者のようだ。
自分だけじゃない、ってことが…案外心強い。
対向車のヘッドライトが余りにも眩しくて…
何度か、目を細めて…走行するのだった。
私は、1つ欠伸をして……、
それから、カーオーディオに手を伸ばした。
最近のマイブーム。アラサー・懐メロ特集で癒しの空間を…作り出す為。
……と、
「え?」
一瞬…、まるで弾かれるようにして。音楽が…飛んだ。
オマケに、寝ていると思われた係長が…。
何か…喋った?
「…あの…係長。今、何か言いました?」
「………。何も?…安眠妨害するな。」
「……………?すみません…。」
「ったく…ハタ迷惑な野郎がいたもんだ。」
それから、車内には、また…念願の、癒しの時が…訪れた。
流れているのは…Ki〇Ki Kidsのデビュー曲。
当時、まさにガラスのように心が脆かった私の…思い出の歌。