恋の捜査をはじめましょう
果たしてこれが、プライベートに該当するのか否かは、わからないけれど…
どちらが誘い、誘われたのかも…分かりゃあしないけれど。
とにかく、これ以上一緒にいると…息が詰まりそうだ、と判断して…
ただ今、やって来たのは…
一軒の、ラーメン店。
ラーメンならば、麺をひたすらすすって…
長居する必要が、ないだろう。
先陣きって暖簾をくぐり、店内に入ると…
そこは既に、満席だった。
「…あれ?」
しまった、ここは…人気店。
待ち時間の…発生だ。
これには、仕方なく外へ出て。
席が空くのを…待つ。
柏木は、2本目になるタバコに火をつけて。
無言のまま、煙をふう~っと吐き出した。
「お前…、鼻が利くな。」
「……?え、なに?」
「知ってたんじゃねーの?ここ、この前の火災が起きたラーメン店ののれんわけした店だって。」
「え。そうなんだ?けど、店名違う……。」
「変わったんだよ。当初は2号店として、本店の人間が独立してやってたみたいだけど…。」
「……へえ~…。」
「ここの店主も、あくまで参考人としてだけど、任意で話聞いたんだ。」
「捜査線上に挙がってたのか…。」
「本店のおやっさんとトラブルがあって、決別したんだと。とはいえ…、彼が火災に関わっていたかっていうと完全にシロみたいだけどな。」
「そっか…。」
「知ってて来たんじゃなかったんだ?」
「たまたま…だよ。前に一回食べに来て、美味しかったから…。」
「……………。一人で?」
「いや、さすがにラーメン屋に一人は…。」
「「………………。」」
どうやら…また、墓穴を掘ったらしい。
「えっと…、けど、柏木…、アンタ捜査してんだったらマズいんじゃないの?」
「いや、事情聴取したのは、違う班のメンバーだし、今日はプライベートだから…何の問題もない。ただの一般客。ダメもとで探り入れてみようかな。」
「……プライベート…。」
ならばこれって、
デートになってしまいませんか?
いやいや、色気もなあんもない間柄…
ましてや、ラーメン店。
そうはなり得ない、か。
「に、しても……結構待たされんなあ…。」
「……ね。」
「アンタ、車で待ってたら?俺、ここに居し、呼んでやるから。」
「……………。」
鼻のアタマ赤くして…、何言っちゃってんの。
「いーよ、私はここで育ってますから…こんくらい平気。」
寒いのが苦手だって言ってたのは、柏木の方だ。
「……ふーん…。どこまでも逞しいな、鮎川は。たまーに優しくしてやればコレだし。」
不意に…
ひょいっと、冷たいモノが……私の手を、掬い上げる。
「痩せ我慢しちゃって。」
柏木の、大きな手が……
私のそれを、掴んでる!
「……あの時みたいに、弱味でも見せれば…もうちょっと男も優しくなんのに…、な。」
「………あの…。」
「ん?」
「離して。」
「何で?」
「何で、って…、」
「俺もさみーもん。こうしてた方が、まだマシじゃね?」
「……マシって…。」
平然と…握ってくれちゃって。
天然なのか、慣れて…いるのか?
この、女ゴロシめ。