恋の捜査をはじめましょう
「「………あ!」」
二人同時に、声を…上げる。
「クリ〇ンだ、ドラゴン〇ールの!」
先に発言したのは…、柏木の方。
「え。そっち?」
てっきり、ワンピー〇で来ると思いきや。
なるほど、自分達が最もアニメを見ていた時期を考えれば…そうなるだろう。
童心にかえる。
そんな…瞬間を、垣間見た気がした。
「可愛い。」
などと…口走ってしまったのは。
つい…気が緩んだのだろう。
「……は?」
ヤツにとっては…決して誉め言葉じゃなかったのかもしれない。
途端に、ギロリと…睨むから。
慌てて、言い直した。
「ハゲろ、柏木。いっそ、クリ〇ンになれ。」
「……またハゲネタかよ。埴輪に言われたくねーな。」
「同じ声、なんでしょ?そうだ、天丼と天ぷらがいい例。大して変わらないし。」
「……………。」
天丼と…天ぷら。
苦手なものと、好きなもの…。
そうだ、柏木が…言ったんだ。
紙一重…だって。
「………………。」
あ…れ?
それは、前に…言われたことだった。
ヤツには、苦手な人がいて…。
けれど、克服したって…言ってた。
『天ぷらと天丼と…同じ。つまり、紙一重ってこと。』
好きと苦手が…紙一重。
じゃあ……、柏木の苦手な人が、私だとしたのなら……?
裏を返せば、それは…
それは?
どぎまぎしている私を、不思議そうに見つめる柏木が…
ぎゅっと、1度、握る手に…力を籠めた。
「痛っ…、ちょっと、なに?」
冷たかったハズの、二人の手は……。
お互いの熱を僅かに伝え合って。
ほんの少し…ポカポカとしていた。
動悸が…身体中を駆け巡る。
一体、柏木は…どんな顔をしているのか。
見上げた…横顔。それは…とても穏やかで、流れる時間に…身を任せているような、そんな……無防備な…横顔。
…が、
タイミング良く、背後のドアが…ガラリ、と開いて。
柏木の指が、跳ねるように、僅かに…動いた。
それと、ほぼ同時に、私たちは左右に避けて…
繋がっていた、小さな温もりが…いよいよ離れていったのだった。