恋の捜査をはじめましょう
火事場の馬鹿力にも…、限界がある。
無理して動いたことが、仇となってしまったのかも…しれない。
足をあげようとすれば…、激痛が走り。
目の前…こんな状況に見舞われてなお、自力でどうすることも…出来ない。
人間は、こうも…無力、なのか?
自分のふがいのなさに…心底、嫌気が射した。
自分で自分の身も…守れずに、他に誰を守る?
「鮎川っ!!」
柏木の声色に、焦りと、苛立ちとが…交じって。
私は、アンタに……助けて欲しいと、そう応える…つもりだった。
けれど、不意に…腕を掴まれて。
何者なのか…、私を背負ったかと思うと…
軽々と持ち上げて。
その、温かく…大きな背中に…
すっかり、声を…失ってしまう。
鼻先が…その人物のうなじに触れて、僅かに匂う汗の…香りに。
驚きを、隠すことが…出来なかった。
まだ、彼の痕跡が…、私の中に、残されていたなんて。
「まさか……、こんな所で会うだなんてな。」
男は…前を向いたまま、ポツリと…呟く。
「………………。」
「地元だし、そういうこともあるかもって…思ってはいたけど。」
「………うん…。」
「久しぶり、潤。」
「……久しぶり…、…さと…、八田。」
「……うん。」
八田 聡…。
高校時代の、同級生。
それから……
「ごめん、仕事中…だったろ。でも、放っておけなくて。なんて…、ちょっと未練がましいか。」
それから、
この前まで付き合っていた、私の…元カレ。