HとSの本 〜彼と彼女の夢〜
俺達は『天使』に興味がない。
『天使』を目指す学園に通っていながら、心根は別の場所に巣食っている。
だから、あの授業は大切じゃない。目的に添わないものを重要視する気はない。
それは俺も、
それは彼も、
『天使』となる存在にしては
欠陥品。
「ところで、物は相談なんだが」
「それ以上口を開くな」
露骨な嫌悪。
コレは今、タブーに触れようとした。
交渉の余地はなしか? 何度目になるかわからないやりとり。
一年くらい前なら、茶化して終わりだったやりとりは、
もう二度と訪れない。
それは俺一人の問題ではないうえに、とんでもない裏切り行為。
彼は、昔こういった。
『禁忌』を研究したい。
自ら『邪悪』に触れたがるなんて、変わり種にも程がある。
当時、そう笑い飛ばした。
だが、彼は本気だった。
本気でそれに触れ、あまつさえ強大な力として利用しようと目論んでいた。
彼は、自称革命家。
この世界はくだらない、と謳う狂言者だった。
戦争でも起こす気か、そう問うたことがある。
それしか手段がないのなら
じっと目を閉じ、考え込んで。
――喜んで引き起こそう――
とても楽しそうに、
彼はそう宣言した。
俺はこうして彼とつるんでいるが、裏切れといわれたら裏切れる。裏切られても怨嗟などない。
俺たちは互いに気が合うが
互いに見捨てられるドライな関係なんだ。
『天使』を目指す学園に通っていながら、心根は別の場所に巣食っている。
だから、あの授業は大切じゃない。目的に添わないものを重要視する気はない。
それは俺も、
それは彼も、
『天使』となる存在にしては
欠陥品。
「ところで、物は相談なんだが」
「それ以上口を開くな」
露骨な嫌悪。
コレは今、タブーに触れようとした。
交渉の余地はなしか? 何度目になるかわからないやりとり。
一年くらい前なら、茶化して終わりだったやりとりは、
もう二度と訪れない。
それは俺一人の問題ではないうえに、とんでもない裏切り行為。
彼は、昔こういった。
『禁忌』を研究したい。
自ら『邪悪』に触れたがるなんて、変わり種にも程がある。
当時、そう笑い飛ばした。
だが、彼は本気だった。
本気でそれに触れ、あまつさえ強大な力として利用しようと目論んでいた。
彼は、自称革命家。
この世界はくだらない、と謳う狂言者だった。
戦争でも起こす気か、そう問うたことがある。
それしか手段がないのなら
じっと目を閉じ、考え込んで。
――喜んで引き起こそう――
とても楽しそうに、
彼はそう宣言した。
俺はこうして彼とつるんでいるが、裏切れといわれたら裏切れる。裏切られても怨嗟などない。
俺たちは互いに気が合うが
互いに見捨てられるドライな関係なんだ。