HとSの本 〜彼と彼女の夢〜
自分は旅人だと、その人は言った。男か女かわからない、中性的で綺麗な顔立ち。
微笑みは太陽のように眩しく
優しさが月のように染みて
声が風のようにくすぐった
手から零れた銀色に旅人の赤が付着していた。
地面に落ち、草を汚し、大地に飲まれていく赤。
とめどなく、
痛々しいほどに、
赤はとまらない。
だというのに
旅人は
「よかった」
と笑った。
その顔に陰りはなく、細い三日月が、夜に浮かぶ静けさで自分を見た。
傷を付けるな、と。
綺麗な白い手が肩を抱いた。
顔がすぐ近く、吹きかかる息さえ心地よく、涼やかな声が心身に溶け込んだ。
「自分は傷つけるな」
旅人は、祈るように
願うように、言葉を紡ぐ。
誰に傷つけられることが遭っても自分だけはしてはいけない。
誰に拒絶されることが遭っても自分だけはしてはいけない。
誰に嫌われても、
自分は好きになってあげよう。
どんなにつらい雨の今日でも
明日は楽しい晴れかもしれない
そんな日を迎えるために、
自分だけは護ってあげよう
たとえセカイが容さなくても
自分だけは、容してあげよう
夕暮れよりも
ちのいろよりも
赤い、
紅い、
あかいひとみが
ぼくをみていた――――
微笑みは太陽のように眩しく
優しさが月のように染みて
声が風のようにくすぐった
手から零れた銀色に旅人の赤が付着していた。
地面に落ち、草を汚し、大地に飲まれていく赤。
とめどなく、
痛々しいほどに、
赤はとまらない。
だというのに
旅人は
「よかった」
と笑った。
その顔に陰りはなく、細い三日月が、夜に浮かぶ静けさで自分を見た。
傷を付けるな、と。
綺麗な白い手が肩を抱いた。
顔がすぐ近く、吹きかかる息さえ心地よく、涼やかな声が心身に溶け込んだ。
「自分は傷つけるな」
旅人は、祈るように
願うように、言葉を紡ぐ。
誰に傷つけられることが遭っても自分だけはしてはいけない。
誰に拒絶されることが遭っても自分だけはしてはいけない。
誰に嫌われても、
自分は好きになってあげよう。
どんなにつらい雨の今日でも
明日は楽しい晴れかもしれない
そんな日を迎えるために、
自分だけは護ってあげよう
たとえセカイが容さなくても
自分だけは、容してあげよう
夕暮れよりも
ちのいろよりも
赤い、
紅い、
あかいひとみが
ぼくをみていた――――