HとSの本 〜彼と彼女の夢〜
 セカイが容さない。
 ヒトが容さない。
 彼が容さない。
 誰か容さない。

 日々はつらくて
 明日は曇りで
 昨日にずぶ濡れて
 今日も打たれて

 それでも、
  自分は容したい

 いきていてもいいですか?
 そんな、むせきにんにきくんじゃなくて、ただゆるす。

  いきていさせてください

 誰に容されなくとも、自分は容すから。
 誰が否定しようと、自分か肯定するから。
 誰が傷つけようと、自分が護るから。

 ただそれだけ。
 ただそれだけのこと。
 それだけで、
 独りに生きられる。

 淋しいことではない、
 悲しいことではない、
 誰と生きることを、彼らが容さないのなら
 独りで生きるだけで
 それはセカイに歯向かう立派な主張。



 だから、

  初めて、

   容してもらえて

 嬉しくないはずがなかった。

 名前も知らない誰か。
 手を振ってくれたヒト。
 白い笑みの女の子。

 初めて、セカイが容してくれた



 そう思えるほど、
 昔の自分は無垢なこども

 セカイの怖さを知らないこども



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