HとSの本 〜彼と彼女の夢〜
 一緒に歩けない。
  それは穢れているから。

 一緒に話せない。
  それは穢れているから。

 一緒に笑えない。
  それは穢れているから。

 容してくれた子も
 やがてセカイに嫌われ始めた。

 傷つけたくない。
 繋いだ手を離せばすむ。
 離れなくない。
 ならばセカイが傷つける。

 ただ出会って、
 ただ気になって、
 ただ手を取ろうとして、
 そんなことさえ
 そんな些細なことさえ
 セカイは容してくれない

 わるいこ
 わるいこ
 いけないこ

 わるいこ
 わるいこ
 いけないこ

 まるでのろい
 なんてしがらみ
 こんなくりかえし
 いなやしせん
 ひどいかなしみ

 そんなに――
 そんなにセカイが嫌うなら――



「きたなくたって、みとめさせてやる――――」





 つばさをちぎられ

 めをつぶされ

 ちをはきだされ

 かみをひきさかれ



 ずたぼろになって、
 起き上がれなくて、
 よごれたしろになったぼくに、
 旅人が悲しそうに肩を抱いた。



 おんなのこは
  もうどこにもいなかった

 セカイは容さなくて
 セカイは蔑んで
 セカイは嫌いあって
 セカイは嘲笑い
 セカイは裁を下し



 女の子は、
  二度と帰ってこなかった



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