HとSの本 〜彼と彼女の夢〜
セカイは優しくない
セカイに勝てない
セカイは傷つける
セカイに奪われる
「そんなものを」
ただ苦しいだけを
ただ悲しいだけを
ただ虚しいだけを
「セカイなんて、認めたくない」
目が覚めた。
昔抱いた夢を見ていた。
なんて夢だ、と毒吐きながらそれがすべての始まりだったことを忘れていない。
たった独りの理解者。
たった独りの救済者。
忘れようがない
消しようがない
悼みようがない
そんな過去の象徴。
散切られて小さくなった翼。
灼かれた痛みでくすんだ瞳。
汚濁で穢されぬいた髪の毛。
昔の面影はなくとも、昔の記憶を揺さ振る己たち。
忌々しいと、思わなかったことは一度たりともなかった。
こんな色が、
この痛みが、
無力と無知を思い出させる。
あの時ああすれば、
この時こうすれば、
数えきれない後悔と怨嗟を吐き出したことなど、星の数ほど遭った。
「……それでも」
誓いの言葉を思い出す。
別れの言葉を思い出す。
最後に交わした約束を、
彼は、まだ覚えている。
「どんなにつらくても、
悲しくても、」
あの子と会わなければよかった。
「……否定だけは、してはいけないんだ」
顔を覆った手が、濡れていた。
くすんだ雲から、雨が降っていた。
それがどんなに悲しい事でも
それがどんなにつらい事でも
忘れる事だけはしちゃいけない
もしも、なかった事にできるなら。あの時の思いはどうなるのだろう。
あの時の喜びは、
あの時の悲しみは、
あの時の切なさは、
彼女の思いは、
いったいどこに行くのだろう。
だから、忘れる事はできない。
過去が消えないのと同じで、
思い出も褪せないと信じてる。
だから忘れない。
その昔も、その約束も。
セカイに勝てない
セカイは傷つける
セカイに奪われる
「そんなものを」
ただ苦しいだけを
ただ悲しいだけを
ただ虚しいだけを
「セカイなんて、認めたくない」
目が覚めた。
昔抱いた夢を見ていた。
なんて夢だ、と毒吐きながらそれがすべての始まりだったことを忘れていない。
たった独りの理解者。
たった独りの救済者。
忘れようがない
消しようがない
悼みようがない
そんな過去の象徴。
散切られて小さくなった翼。
灼かれた痛みでくすんだ瞳。
汚濁で穢されぬいた髪の毛。
昔の面影はなくとも、昔の記憶を揺さ振る己たち。
忌々しいと、思わなかったことは一度たりともなかった。
こんな色が、
この痛みが、
無力と無知を思い出させる。
あの時ああすれば、
この時こうすれば、
数えきれない後悔と怨嗟を吐き出したことなど、星の数ほど遭った。
「……それでも」
誓いの言葉を思い出す。
別れの言葉を思い出す。
最後に交わした約束を、
彼は、まだ覚えている。
「どんなにつらくても、
悲しくても、」
あの子と会わなければよかった。
「……否定だけは、してはいけないんだ」
顔を覆った手が、濡れていた。
くすんだ雲から、雨が降っていた。
それがどんなに悲しい事でも
それがどんなにつらい事でも
忘れる事だけはしちゃいけない
もしも、なかった事にできるなら。あの時の思いはどうなるのだろう。
あの時の喜びは、
あの時の悲しみは、
あの時の切なさは、
彼女の思いは、
いったいどこに行くのだろう。
だから、忘れる事はできない。
過去が消えないのと同じで、
思い出も褪せないと信じてる。
だから忘れない。
その昔も、その約束も。