HとSの本 〜彼と彼女の夢〜
「のどかだなあ」
こうして、何も考えずにいられたのは久し振りだった。
昔は、何にでも噛み付いて。
振り落とされないことに必死で。
耐えるばかりを繰り返して。
気付けば自分以外に誰もいなくて。
そんな世界に、
差し込んでくれた人がいた。
手を伸ばしてくれた人がいた。
今は誰も居ないけど、新しい目標が出来た。
二つの別離が生んだ道。
二つの逢瀬がくれた道。
あの時の喜びを、
忘れるなんて出来なかった。
あの時の悲しみを、
繰り返したくはなかった。
それを、教えてあげたい。
そのために努力する。
そのために近づく。
彼のような強さを、彼女のような強さを。
彼のような心を、彼女のような心を。
――抱いて、伝えたい。
あの喜びを教えたい。
あの悲しみを救いたい。
もともと、
何もなかった自分には
二人が、眩しく見えたんだ。
それを『夢』だなんて
呼べるわけはないけど。
こうして、何も考えずにいられたのは久し振りだった。
昔は、何にでも噛み付いて。
振り落とされないことに必死で。
耐えるばかりを繰り返して。
気付けば自分以外に誰もいなくて。
そんな世界に、
差し込んでくれた人がいた。
手を伸ばしてくれた人がいた。
今は誰も居ないけど、新しい目標が出来た。
二つの別離が生んだ道。
二つの逢瀬がくれた道。
あの時の喜びを、
忘れるなんて出来なかった。
あの時の悲しみを、
繰り返したくはなかった。
それを、教えてあげたい。
そのために努力する。
そのために近づく。
彼のような強さを、彼女のような強さを。
彼のような心を、彼女のような心を。
――抱いて、伝えたい。
あの喜びを教えたい。
あの悲しみを救いたい。
もともと、
何もなかった自分には
二人が、眩しく見えたんだ。
それを『夢』だなんて
呼べるわけはないけど。