HとSの本 〜彼と彼女の夢〜
こんにちは

彼女の授業

 悪魔との確執が生まれたのは今から約十万飛んで一万飛んで千飛んで八百年前。下界に不必要に干渉する彼らに対して嫌悪を抱いていた過激派の天使による制裁行為が発端とされる異端教徒が存在しますが――
「実に興味深い話だ」
「先生は堕天使だったんですか」
「納得したって目で見るな。傷つくだろう」
 教科書の内容に自分の考察を織り交ぜて、だけど棒読みな教師。
 彼女はわたし専属の教師だ。
 禁忌の子として蔑まれ、共に学業を受けられないと主張する、一部の生徒の意思を尊重した特別処置。
 教室は一つ。
 生徒も一人。
 そのためにあてがわれたのが、先生。

 どんな先生がくるのだろう、というよりも。
 わたしはその人に同情した。
 可哀相な先生。貴方はわたしに関わった所為で、同じ教師からも白い目で見られてしまう。
 まだ見ぬ教師に向けた感傷は。



「うむ。白か。
 なんだ、味気はないが基本に立ち返るのも悪くない」



 初対面でスカートをめくる変態を前にして、欠けらも残さず吹き飛んだ。

 それから、たびたび登校拒否をしたことは言うまでもない。

 もし彼がいなかったら、完全に引きこもっていたかもしれなかった。
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