絶対零度の鍵
「ついこないだ作ったばっかりじゃなかったかな?」
長く蓄えた口元の毛を、同じく毛むくじゃらな前足でワシワシと掴んでは放し、鍵師は訊ねる。
「あたしだってそう思ってますぅー」
頬をぷうっと膨らましながら、右京はそっぽを向いた。
店のあちらこちらに木箱が沢山置かれていて、その全てが調合に使われる材料であった。
商品となる鍵も、用途別に並べられて、値札が貼られている。
しかし、今回王御所網の物(ぶつ)は特注品であり、権限を持つ者でないと手にすることが出来ない。
「何処の空気に必要なんじゃ?」
鍵師は相変わらず髭に前足、いや、手を当てている。