絶対零度の鍵
「…まーな。ただ…」


近づいた僕を、兄貴はドアを広げて招き入れる。


そして、ベットに寝かされている、未だ意識の戻らない白銀の髪の少女を指差した。


ぐるぐると包帯に巻かれたあとが、痛々しく服の隙間から見え隠れしている。


緑色の前開きの服が、ただでさえ細い身体を更に寒々しく見せた。


気が動転していて(というより、見たくなくて)今までちゃんと見ていなかったが、目を閉じている今でも、彼女がかなりの美少女であることが窺える。


「……人間離れしている美しさ、だろ?」


じっと彼女を見つめる僕の脇で、兄貴が呟くように訊ねた。


「……」


僕は無言で頷く。


こんなに間近で見ているのに、およそ欠陥というものが見当たらない。
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