絶対零度の鍵

「ほんと、人間じゃないみたいなんだよな」


僕が羨む長身をかがませて、腕組みしながら兄貴が少女を観察する。

黒髪がサラリと揺れる兄貴は、弟の僕が言うのもなんだが、顔立ちも整ってる。

こんな生真面目な性格じゃなければ、女だって選びたい放題だろうと思う。

13も違うから、兄貴が学生生活を送っている時どうだったとかは、よく知らないんだけどきっとモテたに違いない。

いつの間にか少女から視線を外し兄貴を見つめていた僕は、ふとこちらに顔を向けた兄貴とばっちり目が合ってしまった。


「卓、俺の話、聴いてる?」


怪訝な顔をして、僕を見る兄貴に首を傾げる。


「…へ?」


僕の間の抜けた返事に、兄貴がはぁ、と溜め息を吐いた。


「…だから、人間じゃないみたいって話。」


「………だって、それ、冗談だろ?」


益々首を傾げる僕に、兄貴は気まずそうな顔をする。
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