絶対零度の鍵
「……冗談で、瀕死の患者を前に…そんなこと言わないよ」
「はは、だって、兄貴。これ、確かに美人だけどよ、どーみたって、人間以外には見えないぜ?足も付いてるし。」
呆れたように笑って、『これ』、つまり少女を指差した。
兄貴は難しい顔をして頷いた。
「そうなんだよな…。でもな、皮膚の再生能力が赤ちゃん並みに、いやそれ以上あるんだ。恐らく命に関わるような深い傷を負っていた筈なんだけど…数分経つごとに薄くなる。ただ…」
「ただ?」
「…背中の右肩部分にあるえぐられたような一番ひどい傷口だけが、どす黒い毒みたいなものに侵されていて、その部分は良くならないみたいだ…一応できる限り見えるものは除いておいたんだけど、かなり強い毒で、触れた器具は溶けた。…今晩がヤマだな。」
「でもさっき助かったって…」
「即死は免れた。でも、実際は生きているのが奇跡に近いほどの大怪我なんだ。」
そう言うと、もう一度同じ言葉を繰り返す。
「だから、人間じゃないみたいだって言ったんだよ。普通の人間ならとっくに息絶えていてもおかしくないと思う。まして、こんなか細い女の子は。」
「はは、だって、兄貴。これ、確かに美人だけどよ、どーみたって、人間以外には見えないぜ?足も付いてるし。」
呆れたように笑って、『これ』、つまり少女を指差した。
兄貴は難しい顔をして頷いた。
「そうなんだよな…。でもな、皮膚の再生能力が赤ちゃん並みに、いやそれ以上あるんだ。恐らく命に関わるような深い傷を負っていた筈なんだけど…数分経つごとに薄くなる。ただ…」
「ただ?」
「…背中の右肩部分にあるえぐられたような一番ひどい傷口だけが、どす黒い毒みたいなものに侵されていて、その部分は良くならないみたいだ…一応できる限り見えるものは除いておいたんだけど、かなり強い毒で、触れた器具は溶けた。…今晩がヤマだな。」
「でもさっき助かったって…」
「即死は免れた。でも、実際は生きているのが奇跡に近いほどの大怪我なんだ。」
そう言うと、もう一度同じ言葉を繰り返す。
「だから、人間じゃないみたいだって言ったんだよ。普通の人間ならとっくに息絶えていてもおかしくないと思う。まして、こんなか細い女の子は。」